はじめに
ECの競争が激化する近年、新規顧客の獲得だけでは事業の長期的な成功は望めません。事業が長期的に成功を収めるためには、顧客のLTV(顧客生涯価値)を向上させることも必要です。顧客関係管理(CRM)はこの重要な側面の一つであり、多数のCRMツールが存在しますが、こと日本においてはLINEがECマーケターにとって強力な選択肢の一つになりつつあります。本記事では、LINEを活用したCRMや既存顧客マーケティングが、ECのLTV向上にどのように寄与するかについて説明します。
LINEの特性を理解する
ECビジネスの観点からみると、LINEは従来のメールに比べてユニークな機能を持ったメッセージングアプリです。メールマーケティングとの主な違いは次のとおりです。
プッシュ通知の送信
メールとは異なり、LINEはプッシュ通知をデバイスに送信することができます。ユーザーがアクティブにメールボックスをチェックする必要がなく、メッセージを読んでもらえる可能性が高くなります。プッシュ通知はよりリアルタイムに近いコミュニケーションに適していて、たとえば期間限定オファーなどの点で特に役立ちます。
画像やマルチメディアコンテンツを使ったリッチなメッセージ
もちろんメールに画像やマルチメディアコンテンツを含めることができますが、LINEのインターフェースはメッセージングアプリ内での表示に最適化されています。より魅力的なメッセージを送ることができ、顧客の興味を引くことができます。スタンプ、GIF、その他のコンテンツを送信することもでき、より楽しいコミュニケーションを実現することができます。
双方向コミュニケーション
メールのコミュニケーションは通常、企業からメッセージを一方的に送るだけです。他方、LINEの場合は顧客が直接メッセージに返信したり、質問をしたり、フィードバックを提供したりといった、双方向コミュニケーションを行うことができます。こうした双方向のやり取りは顧客エンゲージメントの観点からも有益で、たとえばブランドに対する親密さや信頼感を醸成することも期待できます。
これらの特徴から、エンゲージメント強化、サイトへの再訪問、リピート購入、アップセルなどの観点でLINEを活用することは非常に有益です。
LINEを使ったCRMの採用のメリットとデメリット
ECにおいてLINEを使ったCRMを採用することには、いくつかのメリットとデメリットがあります。
メリット
1.日本市場におけるスケーラビリティ
LINEは日本において8000万人以上のアクティブユーザーを抱えています。さらに、幅広い年齢層が利用しているので、どんな顧客であっても接点を持つことは大きなメリットです。
2.高いエンゲージメント
LINEが提供しているプッシュ通知や画像・スタンプを使ったコミュニケーションにより、従来のメールマーケティングに比べて高いエンゲージメント率が期待できます。
3.ECプラットフォームとの統合
LINE公式アカウントとECプラットフォームを連携するツールを利用することで、ECサイトとLINEアカウントの間でシームレスにコミュニケーションを行うことができるようになります。たとえば、ECカートが持っている顧客の購入履歴や行動履歴に基づいてパーソナライズされたプロモーションを実施するといったことが実現できます。
デメリット
1.特定の地域に限定される
LINEの人気は主に日本と一部のアジア諸国に集中しています。そのため、グローバル規模の観客をターゲットにするビジネスにとって、最適なCRMツールとはならない場合があります。そのような場合は他のCRMツールを検討するか、異なる地域の顧客に対応するためにマルチチャネルアプローチを採用する必要があります。
2.メッセージが読まれなくなる可能性
LINEは高いエンゲージメントが期待できますが、一方でEC事業者に限らず多くの企業が顧客エンゲージメントにLINEを使用していることはご存じのとおりです。ユーザー側が数多くのメッセージを受け取る中で、メッセージが読まれなくなってしまったり、不満を感じてしまう可能性もあります。この問題を軽減するためには、ターゲットを絞った関連度の高いメッセージを適度な頻度で送ることを心がけ、ユーザーに過剰なコンテンツを送信しないようにする必要があります。
LINEを使ったCRMがLTV向上のために重要な理由
ECにおける顧客のLTVは、「平均注文金額」「購入頻度」「顧客寿命」などの要素に分解することができます。LINEやメールを使ったマーケティングは、定期的に既存顧客との接点を維持することで「購入頻度」や「顧客寿命」を改善することができるので、LTVを向上させる重要な手段の一つです。
その中でもLINEはメール配信と比べても高いコンバージョン率が期待できるので、アップセルやクロスセルの観点でのプロモーションをうまく組み込むことができれば、平均注文金額の観点でもLTV向上にアプローチできる可能性があります。
LTVについては、こちらの記事で詳しく解説をしています:
LINEを使ったECのCRMの例
パーソナライズされた商品のおすすめ
顧客の購入履歴や好みに基づいて、LINEを活用してパーソナライズされた商品をおすすめすることができます。たとえば、化粧品ECであれば、敏感肌用のスキンケア商品を以前に購入した顧客に対して敏感肌タイプに特化した新商品やベストセラー商品を紹介するターゲットメッセージを送信できます。
さらにチャットボットを利用して、ニキビや乾燥肌など具体的な懸念に基づいて、パーソナライズされたスキンケアアドバイスやおすすめを提供するところまで実現できれば理想的ですね。
顧客セグメント単位のターゲットプロモーション
完全なパーソナライゼーションまで行わずとも、特定の顧客セグメントに合わせてメッセージをカスタマイズするだけでも有効です。たとえば、特定の商品または商品カテゴリを購入したことがある顧客を絞り込んで、新商品のプロモーションを行ったり、クーポンを発行してみましょう。顧客のニーズと関連するメッセージを送ることで、自分に向けた個別のメッセージのように感じてもらうことができ、商品の購入に繋がる可能性が高まります。
LINEを使ったECのCRMの実施のポイント
ECビジネスでLINEを効果的に活用するために注意すべきポイントをいくつかご紹介します。
顧客の興味や嗜好に合わせたメッセージを送る
ユーザー側は毎日数多くのメッセージを受け取る中で、関連性の低いメッセージが多く送られると、不満を感じてしまいCRM施策として逆効果になる可能性があります。
一斉配信ではなく、顧客セグメントごとに興味や嗜好と関連性が高いメッセージを送ることが重要です。顧客データを分析し、購入履歴やサイト上での行動などに基づいて顧客をセグメンテーションし、それぞれのセグメントに合わせたパーソナライズされたメッセージを作成することが大切です。
ツールを活用したECプラットフォームとの統合
ECプラットフォームとLINEを連携することで、シームレスな購買体験を提供することができます。購買データなどの顧客データを活用したターゲティングやパーソナライズの点からもとても重要なポイントになります。
たとえばShopifyであれば、LINE公式アカウントと連携することができるAPPが複数リリースされているので、利用を検討されてみてはいかがでしょうか。
まとめ
LINEを使ったCRMは、顧客のLTVを向上させるための効果的なツールです。この記事では、そもそもLINEとメールのマーケティングがECビジネスの観点でどう違うのか、という点を中心に基本的な考え方をご説明しました。
この記事ではご紹介していませんが、ECプラットフォームによりLINEとの連携方法は異なりますので、ご利用のプラットフォームに適した方法をご検討いただけたらと思います。