はじめに
ECの競争が激化する近年、新規顧客の獲得だけでは事業の長期的な成功は望めません。事業が長期的に成功を収めるためには、顧客のLTV(顧客生涯価値)を向上させることも必要です。そのためには、メールマーケティングが強力なツールとなります。本記事では、メールマーケティングがECにおいてどのようなメリットをもたらし、LTV向上に不可欠であるか、また、メールマーケティングを実施するための具体的な実例やコツを提供します。
メールマーケティングとは?
メールマーケティングとは、商品やサービスをプロモーションしたり、顧客との接点やエンゲージメントを維持するためにメールを利用することです。一般的にはメールの購読者に対して、ターゲットを絞りパーソナライズしたメッセージを送信することで、リードを育成し、販売促進を行うことを目的とします。
Eコマースの文脈においては、とくに既存顧客との関係を維持し、リピート購入に繋げる目的で活用すると有益です。
ECにおけるメールマーケティングのメリット
メールマーケティングには、以下のようなメリットがあります。
コスト効果の高いマーケティング手法
たとえばテレビ、動画メディア、広告などのマスマーケティングに比べて、メールマーケティングはかなり低コストです。当然のことながらECサイトにおいてメールアドレスの登録者は、少なくとも一度購入をしたことがある、もしくは商品に興味を持っている人になるので、最小限の投資で関心度が高いオーディエンスにアプローチでき、高い投資対効果(ROI)を実現することができます。
セグメンテーションによる収益や顧客満足度の向上
メールマーケティングでは、購入履歴、デモグラフィック、エンゲージメントレベルなどのさまざまなデータを活用することで、対象者をセグメント化することができます。これにより、それぞれのグループに対してカスタマイズされたメッセージを作成し、開封率やクリック率を向上することができます。これらのカスタマイズは一見手間がかかりますが、最終的に売上と顧客満足度を高めることができます。
リピート率の向上
一度購入をした顧客に対して、適切なタイミングで、ニーズに合ったメッセージを送ることで、リピート購入に繋がります。特にEコマースにおいては、新規顧客の獲得よりも顧客維持がコスト効果が高いことが多いため、リピート率の向上は大切です。
施策効果の計測可能性
メールマーケティングの最大の利点の一つは、施策の結果の詳細なデータが取得できることです。たとえば開封率、クリック率、コンバージョン率などの重要なパフォーマンス指標(KPI)を追跡することができ、これらのデータに基づいて戦略を最適化し、キャンペーンを改善することができます。さまざまなマーケティングのアプローチがある中で、効果の計測可能性が高い施策を運用することはビジネス観点でもとても重要です。
スケーラビリティ
たとえば個別のチャット接客などに比べて、メールマーケティングは規模拡大がしやすいです。事業が拡大するにつれて顧客が増えた場合、メール作成などのコスト面は大きく変わらずに、多くの顧客層にアプローチすることができるようになっていきます。
一部のメールマーケティングは自動化が可能
多くのメールマーケティングツールには自動化機能があり、新規購読者向けのステップメール配信、カートの放置リマインダー、商品のおすすめなどを設定することができます。これにより、手を動かし続けることなく顧客との一貫したコミュニケーションを維持し、より高付加価値のマーケティング活動にリソースを使うことができるようになります。
なぜメールマーケティングがECのLTV向上に重要なのか?
ECにおける顧客のLTVは、「平均注文金額」「購入頻度」「顧客寿命」などの要素に分解することができます。そのうち、メールマーケティングは、定期的に既存顧客との接点を維持することで「購入頻度」や「顧客寿命」を改善することができる施策ですので、LTVを向上させる重要な手段の一つです。
また、セグメンテーションを活用したメールマーケテイングを運用することで、顧客のニーズや嗜好に合った商品を複数プロモーションすることができれば、「平均注文金額」にもポジティブな影響が期待できます。
LTVについては、こちらの記事で詳しく解説をしています:
ECにおけるメールマーケティングの例
ウェルカムメール
新しい顧客に対して、限定のオファーや割引を含むウェルカムメールを送信することで、リピート購入につなげます。
パーソナライズされた商品のおすすめ
過去の購入履歴や閲覧履歴から顧客のニーズを把握して商品をおすすめすることで、次回の購入につなげます。
「かご落ち」リマインド
カートに残ったままのアイテムを思い出してもらうメールを送り、購入を完了するように促します。一度カートに入れている商品は顧客の興味関心や購入意欲が高い商品なので、比較的高い確率で購入を完了してもらうことができます。
リエンゲージメントキャンペーン
一定期間以上購買をしていない顧客に対して、特別なオファーやパーソナライズされたコンテンツを提供して、ブランドを思い出してもらい、再びアクティブに購入をしてもらうことを促します。
ブランドストーリー
商品のプロモーションではなく、ECがブランドに込めた思いや開発秘話などのストーリーを発信することで、ブランドに対する共感や親近感を持ってもらうことができます。直接的な売り上げには繋がりませんが、顧客エンゲージメントを高めるという観点からとても有益な施策です。
ECにおけるメールマーケティング実施のポイント
ECビジネスでメールマーケティングを効果的に実施するために重要なポイントをご紹介します。
顧客のセグメンテーション
性別や年齢層だけでなく、購入履歴など行動に基づくの要素を活用して顧客をセグメント化し、ターゲットの関心度が高いメッセージを送信することが重要です。これらのカスタマイズは一見手間がかかりますが、コミュニケーションの共感度を高めることがで、全体的なキャンペーン効果を向上させることが期待できます。
自動化ツール(MA/マーケティングオートメーション)の活用
ウェルカムメールや「かご落ち」メールなど、定型化が可能なメッセージは、自動化ツールを活用して最適なタイミングでメッセージを送信するフローを組むことで効率を大幅に向上させることができます。自動化をうまく活用して、より高付加価値のマーケティング活動にリソースを使いましょう。
パーソナライゼーションに注力する
顧客がメッセージを作成することが重要です。顧客に直接アドレスして、彼らの特定のニーズに合わせたコンテンツを提供することにより、メールマーケティングキャンペーンの効果を大幅に向上させることができます。
パフォーマンスを計測し改善する
開封率やクリック率、コンバージョン率など、重要な指標を計測し、定期的に改善を検討します。異なるメールマーケティング戦略をA/Bテストしてパフォーマンスを分析し、最適なキャンペーンを特定することも大切です。
「お客さまの声」を活用する
メールマーケテイングは1対多のコミュニケーションなので、ブランド側からの一方的な宣伝や説明になってしまいがちです。たとえば顧客のレビューや評価の声をメールに含めることで、ブランドに対する信頼を維持し高めることができます。
魅力的なコンテンツを作成する
顧客のメールボックスには毎日たくさんのメッセージが届きます。開封して中身を読んでもらえるメールにするには、単なるプロモーションに終始するだけではなく、魅力的で価値のあるコンテンツを提供することが重要です。たとえば商品カテゴリに関してノウハウや情報を提供するなどの工夫をすることで、メールを開封してくれる可能性が高まります。
メールリストをクリーンに保つ
定期的にメールリストを更新し、「メール配信を拒否」していない、アクティブな顧客にのみメッセージを送信するようにすることで、健全な評判を維持するだけでなく、施策としてのパフォーマンスも高めることができます。セグメント配信を実施する場合も、定期的にセグメントに含まれる顧客が適切かどうか、見直す必要があるでしょう。
まとめ
メールマーケティングは、ECのLTVを向上させるためにとても重要なツールです。定期的に顧客との接点を維持することで、注文頻度や顧客寿命の観点からLTVに寄与します。
メールマーケテイングは一般的に効果が確認されている「かご落ちメール」やウェルカムメールなどの手法だけでなく、購入履歴や性別・年齢などのデータを利用したセグメント配信が重要です。ターゲットを絞って顧客ごとのニーズに適したメッセージを送ることで、施策としてのパフォーマンスが高くなります。
一方ではメール配信ツールによる定型的メッセージの自動化を活用しながら、付加価値の高いメールマーケテイングにうまくリソースを活用できることが理想的です。
参考記事: