はじめに
このシリーズ記事では、ECPowerを活用して顧客セグメントを作成し、LTV向上にむけたアクションを具体化していくステップを紹介していきます。ECPowerを使いはじめたばかりの方、もしくはECPowerの利用を検討されている方はぜひ参考にしてみてください。
前回の記事では、購入金額や購入回数の観点からロイヤル顧客を定義するシンプルな方法について説明をしました。ですが、それだけではなかなかロイヤル顧客を増やすための具体的な施策がイメージできないという点についても指摘しました。
この記事では、ECPowerを活用してロイヤル顧客の解像度を高めるための方法について説明をしたいと思います。
顔が見えるロイヤル顧客を定義しましょう
ストアの顧客は本当にみんな同じニーズを持っていますか?
購入回数や合計購入金額による客観的な数値ベースのロイヤル顧客の定義は、もちろん有用です。ただ「ではどうしたらロイヤル顧客が増えるのだろう」と考えたときに、なかなか良い案が思いつかないのではないでしょうか。
さて、あなたのストアの顧客はみな同じニーズや目的、嗜好を持っているでしょうか?
ーもちろん商材の種類や、ストアで扱う商品ラインナップ次第ですが、ほどんどのケースではNoのはずです。
たとえば同じ購入回数であっても、実際はまったく別の商品をリピート購入していて、さらに購入頻度も違うといったことは充分に考えられますよね。さらに、もし同じ商品を購入していても、顧客の年齢層や居住地域といった属性ごとにニーズや使用目的が異なるかもしれません。
具体例として、ある街のパン屋を思い浮かべてみます。購入回数が5回以上の顧客の中には、「毎朝習慣的にサンドイッチを購入していく顧客」もいれば、「金曜日の夕方に家族のためにスイーツを購入して帰宅する顧客」もいそうです。同じように購入回数の多い顧客ですが、彼らのようなロイヤル顧客を増やすための戦略は異なるはずです。
たとえば前者は、毎日のように同じ商品を買うので、再購入間隔はとても短く、一方で単価は低くなりますよね。スイーツなどに魅力を感じるわけではなく、ポイントが貯まっていって、たまにコーヒーが無料になったりすると嬉しいかもしれません。
一方で、後者の顧客セグメントは再購入間隔は短くないかもしれませんし、ばらつきがあるかもしれませんが、単価は高い傾向にあります。家族に新鮮さを感じてもらえるような新商品のお知らせがあると購買意欲が高まりますし、木曜日に今週のおすすめ商品メールを送ることが嬉しいかもしれません。
このように、ロイヤル顧客を増やすための具体的なアプローチが思い浮かばない場合、そもそもロイヤル顧客のニーズに対する解像度が低いことが原因であることが多いです。ここを具体化していくと、どのようなステップでロイヤル顧客を増やすかについてのイメージが深まり、マーケティング施策の精度も高くなっていくはずです。
ロイヤル顧客のN1分析から、いくつかのパターンを見つける
ストアによっては、どのようなタイプの「ロイヤル顧客」がいるかを既に把握されているかもしれません。その場合はこの節は飛ばして頂いて構いません。
もしあまりイメージが湧かない場合は、手がかりを見つける方法として、何人かの「ロイヤル顧客」の注文履歴を確認してみることをお勧めします。いわゆるN1分析です。
ロイヤル顧客セグメントの顧客一覧を合計購入回数でソートして、回数の多い顧客の注文履歴を確認してみましょう。
いくつか見てみましょう。
たとえば、あるロイヤル顧客はさまざまな商品をあわせ買いしていることが多いように見えます。
ある顧客は、ひとつの商品をリピートする傾向にあるようですが、途中から商品が変わっています。最初はElegant Rum Babaをリピート購入していて、その後はもっぱらClassic Cannoliを購入していますね。
別の顧客を見てみると、この顧客は長期間にわたってElegant Rum Babaのみをリピートし続けています。
このようにロイヤル顧客の注文履歴をいくつか確認してみて、
- ある商品や商品カテゴリーをリピートする顧客
- さまざまな商品や商品カテゴリーを試す顧客
などのロイヤル顧客のパターンを発見してみてください。
探索機能で、ニーズによる購買傾向の違いを見つける
実際にニーズによってLTVや単価・再購入間隔などの購買傾向の違いがあることを確かめるには、ECPowerの「探索」機能を使ってみてください。
顧客セグメントの一覧画面>条件を探す>グループから探す
このページでは、あなたのストアで「この商品を1回でも購入したことがある顧客」というセグメントのメトリクスが自動で一覧になっています。商品タグや注文タグ、流入元などを確認することができます。たとえば商品別で見てみましょう。
このストアでは、たとえば下の2つ(Classic Victoria Sponge Cakeと、Deluxe Hazelnut Gelato)を購入したことがある顧客セグメントは同じように平均のLTVが高いです。ただし、ケーキを購入したことがある顧客セグメントは平均単価が高く、ガレットを購入したことがある顧客セグメントは購入回数が多い傾向にあるようです。
ロイヤル顧客をニーズによってさらにセグメント化してみる
ニーズによってロイヤル顧客をさらにセグメント化してみましょう。
たとえばこのストアでは、特定の商品タグがついた注文を3件以上しているかどうかで、ロイヤル顧客を「各商品カテゴリーのファン」としてさらにセグメント化しています。
特定商品の注文を3件以上行わず様々な商品を購入している顧客は、”Variety Shopper”とセグメント化してみました。このような条件設定になっています。
こうして見ると、ロイヤル顧客の中でも特定の商品のファンになっている顧客はさらにLTVが高く、Variety Shopperとは購入単価や再購入日間隔にも大きな差があることが分りますね。
このストアでは「さまざまな商品を試す中でお気に入りを見つけてもらい、特定の商品のファンになってもらうことで、LTVの高いロイヤル顧客を増やすことができる」というような仮説を立てられるかもしれません。
まとめ
いかがでしたでしょうか。ロイヤル顧客がどのような人なのか?について、ニーズに基づいて解像度を高めることができれば、ロイヤル顧客を増やすためのマーケティング施策のイメージもつきやすくなるのではないかと思います。
次回の記事は、ECPowerを活用して、ロイヤル顧客を増やすためのステップやカスタマージャーニーを作る方法について解説したいと思います。