はじめに
このシリーズ記事では、ECPowerを活用して顧客セグメントを作成し、LTV向上にむけたアクションを具体化していくステップを紹介していきます。ECPowerを使いはじめたばかりの方、もしくはECPowerの利用を検討されている方はぜひ参考にしてみてください。
前回の記事ではECPowerのKPI分析機能から、コホートLTV表を用いてストアの現在地を把握する方法について説明しました。
この記事では、ECPowerのKPI分析機能を活用して、LTV向上のボトルネックを把握する方法について説明します。
ECマーケターのための顧客セグメントツールECPowerについては、こちらをご覧ください。
LTVの構成要素について
LTVを構成するメトリクス
LTVをどのように向上させるかを考えるうえで、そもそもLTVがどのようなメトリクスで構成されているかを因数分解してみることはとても大切です。世の中にはさまざまな分解の方法が提案されていますが、ECPowerでは下記のようなメトリクスの分解方法を採用しています。
ECPowerでは作成するすべての顧客セグメントについて、LTVに加えて下線を引いたメトリクスを表示しています。
LTVを向上していくためにはまず、平均購入単価、平均購入回数、再購入日間隔の観点からLTVを理解して、どこに改善余地があるのかを特定することが大切です。単価を増やしたり、平均の購入回数を増やしたり、再購入日間隔を短縮することによって、ストア全体のLTVが改善します。
LTV向上のボトルネックを特定する
「KPI分析」機能でとくに注力すべきメトリクスを洗い出してみましょう
LTVの向上には、購入単価、購入回数、再購入日間隔などのメトリクスを、それぞれ改善していくことが重要という説明をしました。ECPowerの「KPI分析」機能を活用することで、それぞれのメトリクスのどこにボトルネックがあるのかを特定することができます。
F2転換率をコホート表で分析する
LTVを向上するための第一歩は、多くの場合、新規顧客(1回だけしか購入していない顧客:F1顧客)をいかにリピート顧客(2回以上購入している顧客:F2~顧客)に転換するか、です。
インサイト>月次分析>F2転換率と進むことで、F2転換についてのコホート分析表が表示されます。
コホート表の基本的な見方については、前の記事で説明したので割愛しまが、実際にF2転換にどのくらいの期間かかっているのかをコホート別に分析することができます。
この例では、コホートによりばらつきがあるものの、「2~3ヶ月目まででF2転換がだいたい頭打ちになるな」ということや、「3ヶ月時点でのF2転換率を比較すると、徐々に悪化しているな」というようなことが分りますね。
このストアにおいては「3ヶ月以内でのF2転換率を20%まで引き揚げる」などの目標を設定して、新規顧客に対するリピート施策に取り組む必要がありそうです。
リピート購入におけるボトルネックを特定する
順調にリピート顧客が増えてきたら、次はいよいよ「購入回数」をいかに増やしていくか、を考えていきましょう。
KPI分析>購入回数分析>継続率と進むことで、購入回数(Fn)を横軸に取ったコホート表が表示されます。
この表は、2回目を購入した人のうちの何%が3回目を購入しているか、3回目を購入した人のうち何%が4回目を購入しているか、…というデータをコホート別に集計したものです。
このストアの「期間全体」の行で見ると、F4以降はある程度安定した継続率でリピート購入が起きていると分かります。一方でF2やF3の継続率が低いので、優先して対処すべきボトルネックであると判断することができますね。
初回購入顧客に対してリピート施策を講じるだけでなく、2回目を購入してくれた顧客に対しても次の購入を促す施策を講じる必要性が高そうです。
このように継続率のコホート表を分析することで、ストアの平均購入回数を増やしていくうえでのボトルネックを特定することができます。
平均購入単価におけるボトルネックを特定する
それでは、平均購入単価のボトルネックを考えてみましょう。
インサイト>購入回数分析>平均購入単価と進むことで、購入回数(Fn)を横軸に取ったコホート表が表示されます。
この表は、各コホートについて1回目の購入、2回目の購入、…における平均購入単価を集計したものです。
「期間全体」の行で見ると、F3まで大きく平均購入単価が増加していることが分りますね。このストアの「アップセル施策」や「クロスセル施策」が功を奏しているのかもしれません。F4以降については、安定していると判断してよさそうなデータです。
このケースには該当しませんが、途中から平均購入単価が大きく下がってしまう場合、対策が必要になるかもしれません。
ただし、ストアの商品構成や戦略が反映されているだけのこともありますので、自ストアの状況と照らし合わせて対処が必要かどうかを判断してください。たとえばプリンター機器のECを例に取ると、初回の機器本体の購入は高額ですが、2回目以降のトナーカートリッジの購入は低い単価となります。
逆に、積極的に購入単価を増やすために、リピート顧客に対してアップセル・クロスセル施策を採用する場合は、「F3以降の平均単価が向上しているかどうか」などがモニタリングすべきKPIになってくるかもしれません。
再購入日間隔におけるボトルネックを特定する
最後に、再購入日間隔に関するボトルネックを検討してみましょう。
インサイト>購入回数分析>再購入日間隔と進むことで、購入回数(Fn)を横軸に取ったコホート表が表示されます。
この表では、F2の場合は1回目の購入からの平均経過日数、F3の場合は2回目の購入からの平均経過日数がコホート単位で表示されています。
「期間全体」の行で見ると、F2からF10に至るまで、リピート回数が増えるごとに再購入日間隔が短縮していることが見てとれますね。このストアの場合はボトルネックというほどの問題はありませんが、F3やF4の再購入日間隔を30日前後に短縮しよう、といった積極的な目標を設定することができそうです。
このケースには該当しませんが、リピート回数が増えるほど再購入日間隔が伸びていく傾向があったり、ピンポイントでF3までの再購入日間隔だけ長い、といった問題が見られる場合には、LTV向上のために積極的に取り組む必要があるボトルネックだと判断できます。
以上、ECPowerを使って、LTV向上のために、購入回数、平均購入単価、再購入日間隔の観点からストアのボトルネックを特定する方法について解説をしました。
最後に、それぞれのボトルネックに対してどのような施策を講じるべきかについて、簡単に解説をしたいと思います。
LTVを増加するための改善策の方向性
F2転換率・リピート率を改善するためには
「初回購入顧客向けのリピート施策を実施する」ことが大切です。
たとえば平均的なF2の再購入日間隔を基準にして、初回購入から一定期間が経過した顧客に対してリピート購入を促すプロモーションメールを配信してみましょう。反応があまりよくない場合は、クーポンを配布するなどの施策が有効かもしれません。
それ以外にも、初回購入直後にThanksメールを送ったり、商品の使用方法などに関するサポートコンテンツを紹介したり、といった方法でブランドに対する印象を良くすることも有益です。
平均購入単価を改善するためには
「アップセルやクロスセル施策を取り入れる」ことが有効です。
たとえば一定のリピート購入をしているF3~F5顧客に対して、購入した商品と組み合わせて利用できる商品をお勧めしたり、より上位ラインナップの商品(単価の高い商品)をプロモーションしたり、といった手法が有効です。反応があまりよくない場合は、クーポンを配布してまずは体験してもらうなどの施策が有効になるかもしれません。
再購入日間隔を改善するためには
「コミュニケーションタイミングの最適化を行う」「接触を増やしてエンゲージメントを高める」といった施策が重要です。
コミュニケーションタイミングの最適化
たとえば30日の再購入日間隔を目標とするのであれば、毎週金曜日に、前回購入から25~32日経過している顧客に絞ってメール配信を行うといった手法が有効かもしれません。
“最適化”という表現を使った理由は、メール回数が多ければ多いほどよいというわけではないからです。一消費者としての経験を思い浮かべて頂きたいですが、過度に多くのメールが配信されるとすこし煩わしく感じたり、メールを開かずに捨ててしまったりしないでしょうか?
たとえば前回購入からの日数を基準として、適切なタイミングに・適切な内容でコミュニケーションを取るということも大切な要素となります。
接触を増やしてエンゲージメントを高める
プロモーションだけではなく、直接の売上を目的としないメッセージやコミュニケーションが、中長期的なエンゲージメントを高めるために有効なケースがあります。
たとえば顧客が親しみを感じるようなストアのブランド・ストーリーを紹介するメッセージを送ったり、興味を持ってもらえそうな商品に関連したTips、商品の使い方に関するコンテンツなどが挙げられます。
こういったコミュニケーションが功を奏すれば、よりブランドへの印象が良くなり、また思い出してもらえることが多くなるので、中長期的に再購入日間隔の短縮に繋がるのではないかと思います。
ロイヤル顧客を増やし、維持する取り組みが大切
ここまでお読み頂きありがとうございます。LTV向上を目指して購入単価や購入回数、再購入日間隔を改善していった先に、最終的には「ロイヤル顧客」や「ファン」をいかに増やしていくか・いかに維持するかという話になるかと思います。
ですが、そもそもロイヤル顧客やファンをどう定義すればよいのでしょうか?そして、ロイヤル顧客を増やすにはどのようなステップを踏むとよいのでしょうか?
次の記事では、この点を中心に解説したいと思います。