はじめに
このシリーズ記事では、ECPowerを活用して顧客セグメントを作成し、LTV向上にむけたアクションを具体化していくステップを紹介していきます。ECPowerを使いはじめたばかりの方、もしくはECPowerの利用を検討されている方はぜひ参考にしてみてください。
LTV向上に向けて走り出す前に、まずはストアの現在地を把握するところから始めてみましょう。この記事では、ECPowerのKPI分析機能を活用して、LTV向上のボトルネックを把握する方法について説明します。
ECマーケターのための顧客セグメントツールECPowerについては、こちらをご覧ください。
LTVの定義について
ECPowerにおけるLTVの定義
ECPowerにおけるLTVは、下記のような定義になっています。
LTV(顧客生涯価値) = 顧客の現在までの全期間における、合計購入金額の平均値
LTVの一般的な定義と比較して下記のような点が特徴です。
予測を含まない実績値ベースのLTV
サブスクリプション型など一部の例外を除き、ECにおいては次の購買がいつ行われるかを正確に予測することは難しいです。ECPowerでは、データの信頼性や実用性の観点から、あくまで実績値で計算をしています。
利益ではなく売上ベースのLTV
厳格な定義では利益ベースでLTVを考えるほうが正しいです。一方で商品数が多いストアや、様々な集客チャネルを利用しているストアは、原価を正確に定義することはとても難しいです。ECPowerはマーケターの実務向けのツールなので、データの実用性の観点から一律に売上ベースのLTVを採用しています。
ECにおけるLTVの詳細や計算方法はこちらの記事で解説していますので、あわせてご参考ください。
ストアのLTVについてもう一歩理解を深める
コホートLTV表を活用してみましょう
ストアのLTVをもう少し深く理解するために、「KPI分析」機能のコホート表を利用しましょう。KPI分析>月次分析>LTVと進むことで、コホートLTV分析表が表示されます。
コホート分析は、顧客を「コホート」というグループに分割し、各コホートの行動を時系列的に測定する手法です。
コホートLTV表では、顧客を初回購入月に基づいてグループ化し、初回の購入から1ヶ月、2ヶ月、….、Nヶ月目時点のLTV(顧客1人あたりの合計購入金額)を計算しています。
コホートによるLTV分析を行うことで、
- LTVがどのタイミングで頭打ちになるのか(=大まかな顧客寿命がいつか)
- 時系列的にLTVが改善しているかどうか
を分析することができます。
LTVを”予測”するための様々な手法が提案されていますが、信頼性・実用性の観点からは最も有用な手法と言えます。コホートLTV分析についてはこちらの記事で詳しく解説しているので、あわせてご参考ください。
さて、それではデモストアのコホートLTV表を使いながら、基本的な表の見方について解説していきたいと思います。
LTVがどのタイミングで頭打ちになるのかを確認する
まず、2022年4月に初回購入したコホートに注目してみましょう。
1ヶ月目、2ヶ月目、…と横に数値を見ていくと、最後の11ヶ月まで順調に数字が大きくなっています。このコホートに関しては、平均して12ヶ月以上にわたってLTVが成長していると判断することができます。
次に、2022年5月に初回購入したコホートに注目してみましょう。
2ヶ月目までは順調に伸びていますが、3ヶ月目以降は大きく伸びが鈍化しています。このコホートに関しては、3ヶ月目までにほとんどの顧客が購入をやめてしまっている、と判断することができます。
最後に、一番下の「期間全体」のコホートを確認してみましょう。これは、指定した期間のすべての顧客のデータを平均(正確には、コホートの人数により加重平均)したものです。
全体を平均すると、6~7ヶ月目で頭打ちのタイミングがきているように読み取れます。最初に見た4月のコホートは少し例外的なデータだったと判断できますね。
※期間後半は個別データの影響を受けやすいので、慎重な取り扱いが必要です。たとえば、「期間全体」の9ヶ月目以降は、2022年4月のコホートの影響が強いため、LTVの数値が大きく跳ね上がっています。
このように、LTVがいつ頭打ちになるかをコホート表を活用して判断することができます。顧客寿命をのばすことは、LTVを向上させるための重要な手段です。コホート表において「LTVが頭打ちになるタイミングをどれだけ遅らせることができたか」で、ある程度正確に”顧客寿命延伸施策”の結果を判断することができると言えます。
時系列的にLTVが改善しているかどうかを確認する
さて、LTVが向上しているかどうかを実際に分析しようとした際に突き当たる大きな問題は、「実際にLTVが確定するまでにはタイムラグがある」ということです。
たとえばLTVが12ヶ月程度で頭打ちになるストアで、実際にLTVが向上しているかどうかを分析しようとすると、丸1年待たなければいけません。これではマーケティング施策のPDCAを回すことも難しく、非現実的です。
そこで、一般的によく利用される方法が、3ヶ月LTV、6ヶ月LTVを先行指標として管理する、という方法です。
まず、さきほどのコホート表で「3ヶ月」のデータを縦に追ってみましょう。
2022年5月のコホートから2022年8月のコホートまでは、順調に3ヶ月LTVが向上し、改善していることがわかります。一方で、2022年9月以降はLTVが下降傾向にあります。
このように、3ヶ月時点・6ヶ月時点などで定点観測することで、先行指標的にLTVが改善しているかどうかを判断することができます。LTVを向上するためのKPI管理方法が決まっていない場合は、ぜひこの手法を取り入れてみてください。
以上、ストアのLTVについてより深く理解するための方法を解説しました。
まとめ
この記事では、コホートLTV表を使って、LTVが頭打ちになるタイミングや、時系列的にXヶ月LTVが向上しているかどうかについて把握する方法について説明をしました。
それでは、実際にLTV向上施策を打つために、どこから手をつければよいのでしょうか?
次の記事では、ECPowerを活用してLTV向上のボトルネックを特定する方法について説明をしたいと思います。