はじめに
このシリーズ記事では、ECPowerを活用して顧客セグメントを作成し、LTV向上にむけたアクションを具体化していくステップを紹介していきます。ECPowerを使いはじめたばかりの方、もしくはECPowerの利用を検討されている方はぜひ参考にしてみてください。
前回の記事では、ニーズに基づいたカスタマージャーニーを考えて顧客セグメントに落とし込むことで、ロイヤル顧客を育てるために、適切な顧客に、適切な内容のマーケティングを行うことができるようになることを説明しました。
この記事では、カスタマージャーニーに「RFM」の考え方を取り入れて、マーケティングコミュニケーションのタイミングや内容を最適化する方法について解説します。
RFMセグメントをカスタマージャーニーに取り入れる
RFMセグメントの基本
RFM分析は顧客の購買行動を、R:Recency(直近の購入からの経過日)、F:Frequency(購入回数)、M:Monetary(合計購入金額)という3つの主要要素に分解します。これらの頭文字を取ってRFMという呼称が広く使われています。
顧客をRFMの観点で点数付けしてセグメンテーションを行うことで、各セグメントの購買行動に即したマーケティング施策を打つことができるようになります。
参考記事:
一般的には、FまたはMによって顧客のロイヤリティを表現し、Rによって顧客のエンゲージメント(離脱リスクの状況)を表現することで、二軸分析を行うことが多いです。
たとえば下記のような形で9つのセグメントを作成することができます。
RFMの優れた点は、働きかけるべき顧客の優先度や、コミュニケーションの内容を最適化することができるという点です。
たとえば、Active顧客は前回の購入からあまり時間が経っていないので、直接的に次の購入に繋げるメールを送るよりも、サンクスメールを送ったり、商品の使い方・ブランドストーリーなどを配信することが適切です。
AtRiskの顧客は、そろそろ次の購入をしてもらいたいセグメントなので、プロモーションを積極的に行うマーケティング施策が適しています。
Churned顧客は、ブランドのエンゲージメントが下がってしまったり、別のブランドに流れてしまっている人が多い可能性があります。優先度は比較的低いですが、丁寧にコミュニケーションを設計する必要があります。
RFMセグメントの欠点を理解する
RFMは非常に分かりやすいフレームワークですが、欠点があります。
まず、このシリーズ記事でもお伝えしてきているとおり、ロイヤル顧客になるまでのステップをF(購入回数)のみで考えているので、顧客の具体的なニーズがイメージできないという点です。ですので、一般的に各RFMセグメントに対して推奨されるマーケティング施策も、具体性を欠いたテクニカルな手法に偏ってしまっていることが多いです。
さらにはR(前回の購入からの経過日)に関しても問題を抱えています。顧客のニーズによって、どのようなRを設定するのが適切かは異なるからです。
前回から挙げている街のパン屋の例で考えてみると分かりやすいです。「毎朝習慣的にサンドイッチを購入していく顧客」と「金曜日の夕方に家族のためにスイーツを購入して帰宅する顧客」では、離脱リスクがあると判断する日数は異なりますよね。前者であれば5日ほど購入がなければ何かあったのだろうか?と考えてしまいますが、後者の場合は2週間空いてもそこまで離脱リスクに敏感にならなくてもよさそうです。
RFMセグメントとカスタマージャーニーを組み合わせて考えるには
ここまで、RFMセグメントのメリットと欠点を見てきました。
既にお察し頂いている方もいるかもしれませんが、私たちはこれまでの記事でロイヤル顧客をニーズごとに分類して、それぞれに対してカスタマージャーニーを定義してきました。
つまり、すでにFやMの分類よりも解像度の高い”横軸”を作ることができています。あとは、各ニーズに対応するカスタマージャーニーごとに、適切なRのしきい値を考えてActive, At Risk, Churnedの3つのステータスを割り振ってあげることで、RFMの良い点を取り入れて適切なタイミングでコミュニケーションができるようになります。
図で表すと、このようなイメージになるかと思います。
それぞれの顧客セグメントの特徴を踏まえながら、適切にしきい値を設定するとよいです。たとえば、ロイヤル顧客のAt Riskは短い期間で設定するとよいですし、逆に初回客はそれよりも緩く設定すると適切かもしれません。
ECPowerでRFMを取り入れたカスタマージャーニーのセグメントを作成する
ECPowerでは、既に作成しているカスタマージャーニーごとの顧客セグメントを、さらにRFMで細分化することができます。
たとえば、”Potential Rum Baba Fans” というセグメントを3つのステータスに分類する場合、このような条件設定を行いました。
全体の346人のうち、すでにChurnedに分類されてしまう顧客が半数近くいます。このストアの場合、まずはActive顧客やAt Riskの顧客に対して優先的にマーケティング施策を考えていくことになるでしょう。
カスタマージャーニーの各セグメントに対する施策のアイディア
ここからは、RFMセグメントの考え方を取り入れたカスタマージャーニーの各ステップで、それぞれどのようなマーケティング施策が考えられるか、という点をご説明したいと思います。
まずは、これまで説明に使っているパン屋のカスタマージャーニー例で施策を整理してみましょう。
初回顧客に対して、リピート購入・F2転換をうながす
まずは初回購入顧客に対して、2回目の購入をしてもらえるようなマーケティング施策を考えてみましょう。
初回購入商品別のActiveセグメント
- 同じ商品のリピートを促すメールマーケティング
- 購入商品の使い方や楽しみ方に関するコンテンツ
初回購入商品別のAt Riskセグメント
- 同じ商品のリピートを促すクーポンの配布
- 前回購入とは異なる商品ラインナップのプロモーション
売れ筋商品以外から初回流入している顧客セグメント
- 売れ筋商品のラインナップをプロモーション
未購入顧客に対するプロモーションやクロスセル
リピーターが多い売れ筋商品がある場合、それらの購入経験がない顧客に絞ってプロモーションを行う施策が考えられます。
特定の商品同士があわせ買いをされることが多い場合、それらを購入したことがある顧客にクロスセルのプロモーションをしてみましょう。
売れ筋商品を購入したことがない顧客のActive・At Risk顧客セグメント
- 売れ筋商品のプロモーション
あわせ買いされることが多い商品のどちらかを購入したことがある顧客
- クロスセルのプロモーション
リピート顧客のエンゲージメントをさらに高める
同じ商品を2回以上購入してくれている顧客は、特定のニーズに合致していて、ファン・ロイヤル顧客になるポテンシャルがある顧客層です。
単純なクーポン配布やプロモーションではなく、たとえば商品の誕生秘話であったり、ブランドストーリー、商品の楽しみ方といった、直接的な売り上げを目的としないコミュニケーションを取ると、さらにエンゲージメントを高めることに繋がります。
同じ商品を2件以上 × Active顧客セグメント
- ブランドに対する共感や好印象を高めるコンテンツの配信
- 商品の楽しみ方についての情報発信
同じ商品を2件以上 × At Risk顧客セグメント
- 適切なタイミング(平均的な再購入日間隔前後)での商品プロモーション
離脱顧客に対するリエンゲージメント施策を打つ
リピート顧客やロイヤル顧客で、Churnedのステータスにある顧客に対しては、やみくもにたくさんメールを送付するのではなく、丁寧にコミュニケーションを設定することが大切です。
たとえば、よく購入されていた商品ごとにセグメントを作成して、その商品カテゴリの新商品のタイミングでメッセージを送ったり、特別なクーポン(Win backクーポン)を配布したり、といった形です。
一度はリピートしてくれている顧客なので、もし戻ってくれば、また優良顧客になってくれる可能性が高いです。購入者にはすぐにWelcome backメールを送るなど、丁寧なコミュニケーション設計を心がけましょう。
リピート・ロイヤル顧客 × Churned顧客セグメント
- 新商品発売のタイミングでメッセージを送る
- 特別なクーポンを配布する
- キャンペーンの購入者にWelcome backメールやクーポンを配布する
ロイヤル顧客のエンゲージメントをさらに高める
ブランドのファンといってもよいロイヤル顧客に対しては、さらにエンゲージメントを高め、維持できるような施策を講じてみましょう。
こちらから促さなくてもリピートをしてくれる可能性が高い顧客ですので、1回きりのクーポンを送るよりも限定感のある特典を用意する方が、ブランドエンゲージメントを高めることに繋がる可能性が高いです。たとえば「限られた人にだけ送っている」というような言葉を添えることも有効かもしれません。
特定商品 × ロイヤル顧客 × Active・AtRisk顧客セグメント
- 新商品の先行販売をおこなう
- 特別なギフト・ノベルティを贈る
- 特別なクーポンを配布する
まとめ
いかがでしたでしょうか。
ロイヤル顧客をニーズごとに定義して、カスタマージャーニーを作ること、そこにRFMの考え方を加えることで、適切な顧客に、適切なタイミングで、適切な内容のマーケティングコミュニケーションを行うことができるようになります。
顧客セグメントに対する解像度も高まり、コミュニケーションのコンテンツ(たとえばメールの文面など)もイメージしやすくなるのではないでしょうか。
次の記事では、ECPowerで作成した顧客セグメントを他社マーケティングツールと連携する方法について解説します。