はじめに
顧客セグメンテーションの手法の1つに「地理的(Geographic, ジオグラフィック) セグメンテーション」があります。ECにおいては「ライフスタイル」の代理変数として考えると有益です。この記事はLTV向上に取り組むECマーケティング担当者の方にむけて、地理的セグメンテーションの概要と活用方法について解説します。
ECにおける顧客セグメンテーションとは
ECにおける顧客セグメンテーションとは、顧客を特徴や行動に基づいてカテゴリー分けすることです。顧客セグメンテーションの主なタイプには、属性セグメント(年齢や性別)、心理的セグメント、地理的セグメント(居住国・居住地)、行動セグメント(購買履歴やサイトでの行動など)があります。
EC事業者は、顧客セグメンテーションにより顧客のタイプ別のニーズや購買目的、購買傾向を理解することができ、顧客解像度を高めて効果的なマーケティング施策を実施することができるようになります。
地理的セグメンテーションとは
まず、ECに限らず一般的な地理的セグメンテーションについて説明します。
地理的(Geographic, ジオグラフィック) セグメンテーションは、地理的データを活用して地域のトレンド、嗜好、ニーズを踏まえたセグメントを作ることをさします。
地域により気候や天候、文化や伝統、経済要因やインフラ整備状況などが異なるため、商材の種類にもよりますが、居住地によって異なるニーズが存在するケースがあります。地理的セグメンテーションを行うことで、こうしたニーズの代理変数として地理的データを活用し、実店舗の出店や広告の出稿、地域ごとの商品バリエーションといったマーケテイング施策に反映することができます。
顧客セグメンテーションの全体像はこちらの記事で解説しています:
気候と天候のパターン
全世界で見ると、地域により気候や天候のパターンが大きく異なりことがあり、居住者のニーズや好みに大きな影響を与えることがあります。全世界で事業を展開する企業にとっては当然のように重要な考え方ですが、日本国内においても例えば降雨量の多い地域や比較的温暖な地域など一定のパターンが見られます。分かりやすい例を挙げると、たとえば寒冷地では防寒面での機能性の高いの衣料品の需要が高いことが想像できます。
文化的・宗教的・伝統的な違い
地域によって文化や伝統が大きく異なり、消費者の好みや行動に影響を与えることがあります。国レベルで見れば地域によって宗教的背景が異なることで、商品そのものやプロモーションを調整する必要があるケースもあります。たとえば食品系の企業が、同じ商品であっても関東むけと関西向けで味付けを変えていることは有名です。
経済レベル
所得水準や生活費などの経済レベルも、地理的な場所によって差が生まれる一つの例です。たとえば裕福な地域の居住者は、比較的経済的に恵まれていない地域の顧客と比較して異なる購買習慣や好みを持つことがあります。
立地特性
実店舗を持つ企業にとって特に重要なのは、街区の用途や交通インフラなどの地域の立地特性です。たとえばコンビニエンスストアなどでは、オフィス街と住宅街で品揃えを変えています。
ECで地理的セグメンテーションを活用する方法
では、実際にECビジネスで地理的セグメンテーションをどう活用できるかについて説明します。
もし全世界で事業展開をされている場合は、さきほど述べたような点(国ごとの気候や文化・宗教・経済などの要素)を考慮してマーケティングをすでに行っているかもしれません。一方で、国内向けのビジネスを行っている事業者にとっては、たとえば「都道府県でセグメンテーションをしましょう」と言われてもあまりピンとこないのではないでしょうか?
顧客セグメンテーションの基本的な考え方は、「同じニーズを持つ顧客のかたまりを作ること」です。ですので、地理的データを「ライフスタイルの代理変数」として捉えると、EC企業にとっても扱いやすくなるのではないかと思います。いくつかの切り口について例を挙げて説明します。
都会地域とそれ以外でセグメントを作る
一つの切り口として、顧客の居住地データを活用して、いわゆる都会地域と、あまり都市化の進んでいない地域の2つのセグメントに分けてみるとどうでしょうか?
平均的な世帯人数であったり、自家用車の所有状況、一戸建て住宅か集合住宅か、などの点や、余暇時間の使い方といった「ライフスタイル」の違いをイメージすることができるようになります。
たとえばギフト商品のECストアであれば、親世帯と離れて居住していることが多い都会地域の顧客セグメントにターゲットを絞って、父の日・母の日のeギフト(注:実際に会わずにギフトを贈ることができる注文方法)を提案するプロモーションを行うといったマーケテイング施策を考えることができます。
その地域の”実店舗”の状況でセグメントを作る
もう一つの切り口は、自社ECと類似した商品を提供している実店舗の数や品ぞろえ、アクセスといった要素を地域ごとに分析してセグメント化する方法です。
たとえば、店舗の選択肢が少ない地域や、品ぞろえが少ない地域、実店舗へのアクセスが不便な地域では、ECで商品を購入する重要性が比較的高くなるため、よりリピート購入に繋げやすいといった仮説を立てることができます。
機械的に都道府県で地理的セグメントを作るのではなく、あくまで同じニーズを持ったかたまりに顧客を分けるということが大切です。
このように顧客の「ライフスタイル」をイメージできる形でセグメンテーションを行うことよって、マーケティング上意味のある示唆を得ることができるようになります。
まとめ
そもそも顧客のライフスタイルは、マーケティング上とても重要な観点ではありますが、ことECの場合は個々の顧客のライフスタイルを把握することは非常に難しいです。購買後アンケートなどを利用したとしても、直接的にセグメンテーションに活用できるデータを集めるハードルはかなり高いのではないでしょうか。
地理的セグメンテーションを、顧客のライフスタイルの代理変数に見立てることで、ターゲットを絞ったマーケティング施策に応用することができるようになります。ターゲットを絞ったマーケティング施策の実施により、リピート率やコンバージョン率の向上が期待でき、LTVの向上にも繋がります。
もちろん、ライフスタイルの要素は、業種や商材によってもどの程度重要かは異なります。他の記事で紹介している「人口動態(Demographic)セグメンテーション」の方が重要、またはその組み合わせ必要になるかもしれません。まずは地域ごとに購買傾向の差があるかどうかをデータで確認したり、仮説を立てて検証してみることが正しいアプローチと言えるでしょう。
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参考記事: