はじめに
ECにおいて顧客セグメンテーションの手法の1つである「人口動態(Demographic, デモグラフィック)セグメンテーション」は、「ライフサイクル」に紐づくニーズの代理変数として考えると有益です。この記事はLTV向上に取り組むECマーケティング担当者の方にむけて、人口動態セグメンテーションの概要と活用方法について解説します。
ECにおける顧客セグメンテーションとは
ECにおける顧客セグメンテーションとは、顧客を特徴や行動に基づいてカテゴリー分けすることです。顧客セグメンテーションの主なタイプには、属性セグメント(年齢や性別)、心理的セグメント、地理的セグメント(居住国・居住地)、行動セグメント(購買履歴やサイトでの行動など)があります。
EC事業者は、顧客セグメンテーションにより顧客のタイプ別のニーズや購買目的、購買傾向を理解することができ、顧客解像度を高めて効果的なマーケティング施策を実施することができるようになります。
顧客セグメンテーションの全体像はこちらの記事で解説しています:
人口動態セグメンテーションとは
人口動態セグメンテーションとは
人口動態セグメンテーションは、年齢、性別、家族構成、所得レベル、職業、教育などの属性データに基づく顧客セグメンテーションの方法です。
セグメンテーションと言えば、まず年齢や性別に基づく顧客セグメンテーションを思い浮かべる人が多いです。このアプローチの利点は、各セグメントに関連する統計データを簡単に入手できることでしょう。たとえば、日本では総務省統計局のサイトで、人口動態に関連するさまざまな統計情報に誰でもアクセスできます。
人口動態セグメンテーションの本質は?
しかし、人口統計に基づくセグメンテーションがそもそもなぜ重要なのかについては、あまり注目されていません。重要なポイントは、人口動態データが「ライフサイクル」に関連するニーズの代理変数として役立つことです。ここで、ライフサイクルとは、各消費者それぞれの人生の段階を指します。
顧客セグメンテーションの基本的な考え方は、「同じニーズを持つ顧客のかたまりを作ること」です。消費者それぞれの人生のステップに紐づいたニーズを、性別や年齢、現在の職業や所得レベルなどのデータを活用することによって推測する取り組みが、人口動態セグメンテーションの本質と言えるでしょう。
ターゲティングに人口動態セグメンテーションを活用する
人口動態セグメンテーションを活用することで、ターゲットを絞ったマーケティング施策を行うことができるようになります。たとえば、結婚や出産などのライフイベントに焦点を当てた商品の場合、20代~30代のセグメントが重要になります。アパレルやコスメなどの分野では、より詳細な年齢層に分けてターゲットを想定したプロモーションを行っているケースもあります。
ECにおける人口動態セグメンテーションの活用方法
顧客セグメンテーションの基本的な考え方は、「同じニーズを持つ顧客のかたまりを作ること」です。考えなしに男女や年齢で顧客セグメントを作っても、まったく実用的ではありません。ECにおいて人口動態セグメンテーションを効果的に活用する際にも、そのセグメントを活用したマーケティングに意義があるかどうかを判断することが重要です。
年齢に基づくセグメンテーション
特定のライフイベントやライフステージに焦点を当てた商品の場合、年齢データによってターゲットを絞ることが重要です。
利用者と購入者が異なる商品の場合には、それぞれの年齢も考慮に入れるとより深みのあるセグメンテーションが可能です。たとえば小中学生向けの衣料品をプロモーションするのであれば、30代~40代の女性をターゲティングすることは有効そうです。ほかにも、たとえば万年筆などの高級筆記具を、20~30代会社員に対して、お世話になった50代上司の退職祝いとして訴求する、などが考えられそうです。
性別に基づくセグメンテーション
性別に基づくセグメンテーションはすべての商品に適しているわけではありませんが、たとえば女性向け商品を男性に対してギフトとしてプロモーションするなどのケースでは役に立つかもしれません。
職業に基づくセグメンテーション
ブランドによっては最初から特定の職業に絞り込んだ商品を提供しているかもしれません。そうでない場合、たとえばデスクワーク中心のエンジニアか、外回りの多い営業マンか、普段から家にいることが多い主婦層かなど、特定の職業にターゲットを絞ることでメッセージをパーソナライズすることができます。
人口動態セグメンテーションを活用する注意点
統計としての人口動態データの入手が容易な反面、目の前にいる一人ひとりの顧客の人口動態データを取得することはますます難しくなってきています。ECにとっても必要以上の個人情報を集めることへの風当たりは強まる一方です。
「ライフサイクル」に紐づくセグメンテーションは一般論としては重要ですが、商品のラインナップによりどの程度有益かは異なります。まずは自社ECが人口動態データによるセグメンテーションに意味があるかどうか、作成したセグメントをマーケティング上有効に活用できそうかどうかを、冷静に立ち返ってみることが大切です。
まとめ
人口動態データは、各顧客のライフサイクルに紐づくニーズを洗い出す代理変数として有益です。ターゲットを絞ったマーケティング施策の実施により、リピート率やコンバージョン率の向上が期待でき、顧客生涯価値(LTV)の向上にも繋がります。
人口動態セグメンテーションは統計データの活用が容易な反面、一人ひとりの顧客のデータを取得することのハードルが難しくなってきています。人口動態セグメンテーションだけでなく、行動セグメンテーション、RFMセグメンテーション、地理的セグメンテーションなど、同じニーズを持つ顧客を洗い出すための他の方法をあわせて考慮することが大切です。
参考記事: