【セミナーレポート】店舗とECを横断した「顧客分析」の始め方

【セミナーレポート】店舗とECを横断した「顧客分析」の始め方

本記事は、2026年8月27日に、オムニチャネル会員連携アプリ「Omni Hub」を提供するリワイア社と共催したセミナー「リピート売上・LTV向上につながる顧客の可視化とは?」の内容をもとに再構成したものです。

顧客分析は、新しい概念ではない

昔の商人は、顧客台帳を持っていました。

「田中さん。ご来店は2ヶ月に一度。いつもの緑茶。お孫さんへの贈答用」

名前、来店頻度、よく買うもの、購入の背景。商売人はそうした情報を頭と帳面で覚えていて、次に田中さんが来店したときには「そろそろお孫さんのお誕生日ですか」と声をかけることができました。

顧客分析とは、本来この「顧客台帳」のことです。決して新しい概念ではありません。

ところがECの時代になり、状況は少し変わりました。

データは増えたのに、人が見えにくくなったのです。

管理画面を開けば、売上、注文数、CVR、アクセス数など、さまざまな数字を見ることができます。しかし、「この人は誰なのか」「また買ってくれるのか」「何を気に入っているのか」は、なかなか見えてきません。

ECでは「数字」は見える。でも「お客様」は見えにくい。これが、多くのストアが抱えている課題です。

売上分析と顧客分析は別物

「分析ならやっています。毎週、売上レポートを見ています」という方は多いと思います。

もちろん売上分析は大切です。ただ、売上分析と顧客分析は、主語が違います。


売上分析 顧客分析
主語 注文
問い 何が起きたか だから何をするか
見るもの 売上・注文数・AOV LTV・リピート率・購入間隔
時間の扱い ある期間を切り取る 同じ人を追いかける
アウトプット 報告 施策

どちらも必要です。ただし、「次の一手」につながりやすいのは顧客分析です。

売上分析は、「先月の売上が10%落ちた」という事実を教えてくれます。しかし、それだけでは「誰に、何をすべきか」までは分かりません。そのため、売上レポートの会議は「来月は頑張りましょう」で終わってしまいがちです。

一方で顧客分析は、「初回購入から30日を過ぎても戻ってこない人が増えている」といったことを教えてくれます。ここまで分かれば、対象も打ち手も自然と見えてきます。

EC時代の顧客台帳は、セグメント単位で作る

とはいえ、数千人、数万人の顧客がいるECで、1人ずつ台帳をつけるのは現実的ではありません。

そこで必要になるのが、「似た人のかたまり」で見ることです。これがセグメントです。

たとえば、次のようなかたまりです。

  • 初回購入から30日以内の人

  • 年3回以上購入している人

  • 店舗とECの両方で購入している人

1人ずつ追うことは難しくても、セグメント単位であれば追いかけられます。セグメントを作ることは、現代版の顧客台帳を作ることだと考えています。

割合で止まる分析と、人物像まで見える分析

ここで大切なのは、セグメントを「作って終わり」にしないことです。

Shopifyの標準機能でも、顧客セグメントは作れます。たとえば、「過去180日以内に2回以上購入したリピーターは12,845人、全体の18.2%」といったことは確認できます。

ただし、標準機能で分かるのは、基本的には「何人いるか」までです。顧客台帳として使うには、さらにその先の問いに答える必要があります。

  • この人たちは何を買っているのか

  • どのくらいの周期で戻ってくるのか

  • この人たちは育っているのか、つまりLTVは伸びているのか

なぜShopify標準では、ここで止まりやすいのでしょうか。

理由は、Shopifyのデータ構造にあります。Shopifyの中心にあるのは「注文」であって、「人」ではありません。顧客は、いわば注文に紐づく情報として扱われています。

売上を記録する「売上帳」としては非常に優れています。しかし、同じ人を時間軸で追いかける「顧客台帳」として作られているわけではありません。そのため、継続率、購入間隔、LTVの推移、コホートといった「人を追いかける指標」は、標準機能だけでは把握しにくいのです。

同じ「クロスユース顧客800人」というセグメントでも、その中身が見えなければ施策にはつながりません。

たとえば、「LTV平均24,000円、平均購入回数3.0回、購入間隔60日、よく買う商品トップ3はこれ、主な流入チャネルは検索とSNS」と分かって初めて、単なる人数が人物像に変わります。

人物像が見えれば、打つべき施策のヒントはすでにその中にあります。

店舗とECでは、同じ1人が2人に分かれている

ここまではECだけの話でした。店舗を持つブランドには、さらに手前に大きな課題があります。

それは、店舗のPOSに記録されている田中さんと、ECに記録されている田中さんが、別人として扱われていることです。

同じ1人の顧客が、POSの顧客IDとShopifyの顧客IDで、2人として記録されている。この状態では、どれだけ分析を頑張っても、店舗とECを横断した顧客の姿は見えません。

たとえば、店舗では何度も購入してくれている上得意のお客様が、ECのデータ上では「1回だけ購入した休眠顧客」に見えてしまう。こうしたことは珍しくありません。

店舗とECを横断した顧客分析には、2つの段階が必要です。

1. 1人に戻す。
店舗POS、たとえばスマレジやSquareと、Shopifyの会員情報・購買履歴を連携し、同じ人を同じ人として記録する。ここを担うのがOmni Hubです。Omni Hubで連携すると、店舗の購買履歴がShopifyの顧客に統合され、「1人の顧客」としてのデータが揃います。

2. その1人を、かたまりで見る。
統合された顧客データを、人を主語にしてセグメント単位で分析する。ここを担うのが、ECPowerのような顧客分析アプリです。

データの流れは、次のようになります。

店舗POS(スマレジ/Square)
  → Omni Hub(会員情報・購買履歴を連携)
  → Shopify(1人の顧客に統合されたデータ)
  → 顧客分析(人を主語に、セグメント単位で可視化)
  → Shopify顧客タグ(分析結果をタグとして書き戻す)
  → メール・LINE・広告の配信対象へ

この2つは、どちらか片方だけでは成立しません。

Omni Hubでデータを統合しただけでは、「店舗もECも使う人が何人いるか」までしか分かりません。一方、分析アプリだけを入れても、EC上の顧客データしか見えず、LTVは実態の一部しか捉えられません。

統合と分析が揃って初めて、店舗とECを横断した本当の顧客像が見えてきます。

まず「店舗のみ・ECのみ・クロスユース」を比べる

統合と分析が揃ったら、最初にやるべき比較は明確です。顧客を次の3つのセグメントに分けます。

  1. 店舗のみ:店舗でしか購入していない人

  2. ECのみ:オンラインでしか購入していない人

  3. クロスユース:店舗とECの両方で購入している人

この3セグメントについて、次の4つの軸で比較します。

  • それぞれ何人いるのか

  • LTV・購入回数・購入間隔はどう違うのか

  • 何を買っているのか

  • いつ戻ってくるのか

セミナーのデモでも実際のデータを使ってお見せしましたが、多くのブランドで共通して見えてくるのは、クロスユース顧客、つまり店舗とECの併用顧客のLTVが高いということです。

店舗とECの両方に接点がある人は、購入頻度や継続率も高くなる傾向があります。

ここから、やることは大きく3つに絞られます。

1. 併用顧客の価値を、自社の数字で確かめる。
「併用顧客はLTVが高いらしい」ではなく、自社ではどれくらい高いのかを確認します。この数字が、店舗とECの連携施策にどれだけ投資すべきかを判断する材料になります。

2. 引き上げる商品とタイミングを見極める。
店舗のみ・ECのみの顧客が、「何を」「どんな周期で」買っているのかを見ます。

たとえば、店舗のみ顧客の購入間隔が60日なら、50日目に、その層がよく買っている商品をECで案内する。ECのみ顧客には、よく買う商品と相性のよい店舗体験を案内する。

人物像から逆算すると、併用への引き上げ施策は具体的になります。

3. 施策の結果、併用顧客が増えているかを確認する。
施策は打って終わりではありません。クロスユースセグメントの人数やLTVを定点観測すれば、施策が効いているかどうかを数字で確認できます。

効いていなければやめる。効いているなら続ける、広げる。この判断ができることも、セグメントを顧客台帳として持つ価値です。

根拠を持って施策をする

顧客像が見えないまま施策を考えると、どうしても打ち手は一般的なものになりがちです。

「店舗購入者にECのクーポンを配る」
「EC購入者に来店促進のLINEを送る」

もちろん、こうした施策が悪いわけではありません。ただ、誰にでも言える施策は、自社の顧客の実態に基づいていない可能性があります。そのため、効果も読みづらく、打ちっぱなしになりがちです。

顧客像が見えていると、同じ「店舗からECへの誘導」でも解像度が変わります。

「店舗のみの顧客は購入間隔が60日。だから50日目に、この層がよく買っている商品をECで案内する」

対象、タイミング、オファー。この3つすべてに理由がある状態です。

思いつきの施策と根拠のある施策の違いは、アイデアの奇抜さではありません。誰に、いつ、何を届けるのか。その理由があるかどうかです。

そして理由があるからこそ、結果の検証もできます。

まとめ

セグメントを作ることは、現代版の顧客台帳を作ることです。

売上分析と顧客分析は、主語が違う別の営みです。売上分析は「何が起きたか」を見るもの。顧客分析は「だから何をするか」を考えるためのものです。次の一手につながるのは、人を主語にした分析です。

ただし、Shopify標準は基本的には「売上帳」であり、人を時間軸で追いかけるための顧客台帳ではありません。割合が分かるところから、人物像が見えるところまで進むには、専用の仕組みが必要になります。

店舗を持つブランドなら、始め方は明確です。

まずOmni Hubで、店舗とECに分かれている同じ1人の顧客を、1人に戻すこと。そのうえで、店舗のみ・ECのみ・クロスユースの3つに分けて比較すること。

そうすれば、併用顧客の価値を自社の数字で確かめられます。そして、どの顧客に、どの商品を、どのタイミングで案内すべきかが具体的になります。

店舗とECを横断した顧客像が見えると、「やること」と「やらないこと」が決まります。

顧客分析は、特別なスキルを持つ人だけのものではありません。昔の商人が当たり前にやっていたことを、データの力で取り戻す。その第一歩が、店舗とECを横断した顧客台帳づくりです。