
「LTV 2万円」「リピート率30%」こうした数字を毎月見ていても、自店で何が起きているのか、本当のところは見えてきません。
平均値というのは、いろんな顧客の動きを一つの数字に丸めてしまったものです。F1の人とロイヤルの人ではまったく違う買い方をしているのに、その違いが平均の中に埋もれてしまいます。だから、平均だけを追っていると「ロイヤルが減っている」「F1ばかり増えている」といった大事な変化に気づけません。
では、何を見ればいいのか。
答えはシンプルで、顧客を分けて見るだけです。そのためのフレームが、これからご紹介する「6マスフレーム」です。
毎月、このフレームで顧客を見ていくだけで顧客のリピートを底上げすることができます。
顧客の6マスフレーム
顧客全体を、購入回数(F階層 / Frequency)を軸に F0、F1、F2、F3-4、F5+、非アクティブ の6つに分けます。

6マスフレームの良さは、シンプルなのに 顧客の現在地と次に進む方向の両方が見える ことです。F0からF5+までの並びは「これまでにどれだけ買ってくれたか」を表し、非アクティブは「いま、関係が続いているか」を表します。この一覧さえあれば、顧客の状態のほとんどが把握できます。
6マスフレームの作り方
F階層の決め方
| マス | 定義 |
|---|---|
| F0 | 会員登録済み・未購入 |
| F1 | 購入1回 |
| F2 | 購入2回 |
| F3-4 | 購入3〜4回 |
| F5+ | 購入5回以上(ロイヤル) |
ロイヤルの定義は、業態によっては「累計購入額が上位20%」のほうが実態に合うこともあります。家具やアパレルのように高単価・低頻度の商材だと、回数より金額のほうが「この人はうちの太客だ」という感覚に近かったりします。
まずはF5+で運用してみて、3ヶ月くらい見た上で、ズレが大きければ基準を見直すのがいいと思います。
非アクティブの決め方
| 状態 | 定義 |
|---|---|
| アクティブ | 直近の購入から、平均購入間隔×1.5以内 |
| 非アクティブ | それを超えた顧客 |
たとえば全顧客の平均購入間隔が60日のストアなら、90日以内ならアクティブ、それを超えたら非アクティブです。
ここでのポイントは、「自店の平均購入間隔の1.5倍」というルールで決めることです。商材によって購入サイクルは大きく違うので、「90日固定」のような一律のルールでは実態に合いません。自店のデータから出した数字を使うことで、判断の根拠もはっきりします。
商品サイクルが長めの店舗なら×2.0、早めにフォローしたい店舗なら×1.0〜1.2に調整するのもアリです。
マスごとの典型的な打ち手
6マスに分けたら、それぞれのマスごとの施策を考えます。

ここで一つ大事なのは、全マスに同時に施策を打つ必要はない ということです。
人もお金も時間も限られています。6マス全部に施策を打とうとすると、一つひとつが薄まって、結局どれも中途半端に終わります。何が効いて何が効かなかったのかも分からなくなります。
6マスフレームの正しい使い方は、自店のどのマスに人数が多いか、どこに伸びしろがあるかを見て、1つのマスにだけ集中することです。
どのマスにフォーカスするかを決める
「どのマスを今月のフォーカスにするか」を決めるのが難しそうに感じるかもしれませんが、実はそんなに難しくありません。毎月、この3つを順番に見るだけです。
① 構成比で異常に大きい・小さいマスはないか?
たとえば、こんな状態です。
- F1が全体の60%を超えている → F2化が課題
- ロイヤル(F5+)が10%未満 → 育成が課題
- 非アクティブが40%を超えている → 復帰が課題
構成比を見て、明らかに偏っているところがあれば、そこがフォーカス候補になります。
② 先月から急に変化したマスはないか?
- F1が急増している → 新規獲得は順調、次はF2化に注力する番
- ロイヤル(F5+)が急減している → 流出原因を特定する必要がある
- 非アクティブが急増している → 何か離脱要因が起きている
先月との比較で動きが大きいマスは、放置すると問題が広がるため、早めに手を打ちます。
③ 自社ストアの構造で、どこを動かすと売上に効くか?
- F1の人数が多ければ、F1→F2の昇格率を1ポイント動かすだけで売上に効く
- ロイヤル(F5+)が少なければ、1人増えるだけで売上構造が変わる
- 非アクティブが多ければ、復帰率を少し上げるだけでも効果が大きい
人数の多いマスを少し動かすか、影響力の大きいマス(ロイヤル)を狙うか。テコの原理で、効くポイントを選びます。
この3つに答えれば、今月どのマスにフォーカスすべきかが自然と決まります。
始め方と続け方
6マスフレームは、30分あれば始められます。
最初にやるのは、6マスのセグメントを作ること。
次に、各マスの顧客数・LTV・平均購入単価・購入回数・再購入間隔を一覧にします。これだけで、自社ストアの構造が一目で見えるようになります。「F1が多すぎる」「ロイヤルが薄い」「非アクティブが増えている」など、何かしらの発見があるはずです。
最後に、先ほどの3つの問いに答えて、今月フォーカスするマスを1つだけ選びます。あとは、そのマスへの施策を1つだけ実行するだけです。
これが導入です。
導入したあとは、月45分のリズムで運用します。月初に30分かけて、6マスの数字を更新し、今月のフォーカスマスを決めます。月中はフォーカスしたマスへの施策を実行。月末に15分だけ使って、そのマスの数字が動いたかをチェックします。これを毎月繰り返すだけです。
正直なところ、最初の1ヶ月では何も変わらないと思います。それでも続けてみてください。
3ヶ月続けると、構成比に変化が見えてきます。F2の比率が少しずつ上がってきたり、ロイヤルの離脱が止まってきたり、小さな動きが見えるようになります。
半年続くと、ストアの顧客資産が違うものになってきます。広告を止めても売上が落ちにくくなったり、非アクティブの比率が安定してきたり、ストアの構造そのものが変わってきます。
これは複利のような効果です。毎月少しずつフォーカスしたマスが改善していくと、半年後・1年後にはストア全体の体質が変わってきます。気づかないうちに、ストアが強くなっていく感じです。
6マスフレームに慣れてきたら
6マスフレームが習慣になってきたら、次のような分析にも進めます。
- F2に昇格した顧客の初回購入商品を見る → 新規LPで何を推すべきかが見えてきます。F2に育ちやすい入口商品が特定できれば、広告の効率も変わります
- 流入元別のF階層分布を見る → 広告の評価軸が「獲得単価」から「育成後のLTV」に変わります。F2化率の高い流入元に予算を寄せられるようになります
- 非アクティブ顧客のF階層別の復帰率を見る → 掘り起こし施策の優先順位が決まります。F3-4以上の非アクティブは復帰しやすく、F1非アクティブは復帰しにくい、といった傾向が見えてきます
どれも、まずは6マスフレームが土台になります。6マスフレームでストアの構造を把握できていない状態で応用に進んでも、得られるものは多くありません。順番が大切です。
まとめ
顧客分析は、この6マスフレームを見るだけで十分です。
- 分ける:F0、F1、F2、F3-4、F5+、非アクティブの6マスに分類する
- 見る:各マスの数字を月1回更新する
- 決める:フォーカスするマスを1つ選ぶ
- 効果を見る:構成比の変化を追う
これを毎月繰り返すだけ。月45分の運用で、半年後の景色が少しずつ変わってきます。
まずは今すぐ、6マスを並べてみるところから始めてみてください。

