顧客起点の商品分析

顧客起点の商品分析

顧客分析でやりたいことは、突き詰めるとシンプルです。それは、お客様一人ひとりを理解して、最適な人に、最適なタイミングで、最適な訴求を届け、もう一度買ってもらうことです。

今回は、それを「商品」の視点で考えてみます。

お店には商品がたくさんあって、どれをどう分析すればいいのか、入り口でつまずきやすいところです。多くのお店では、商品を売上ランキングで見て終わりになります。よく売れている順に並べて、上のほうを大事にして、下のほうは見直しの対象にする。一見もっともらしいのですが、この見方だけだと、よく売れている商品しか主役になりません。

この記事で整理したいのは、商品を「売上」で見るのをやめて、「顧客をどう動かすか」で見る方法です。同じ商品でも、見るものさしを変えると、評価がまるごと入れ替わります。

商品を「売上」で見ると、何が見えないか

売上ランキングが教えてくれるのは、「その商品が今いくら売れたか」だけです。その商品を買った人が、そのあとどうなったのか。もう一度戻ってきたのか、それきりいなくなってしまったのか。そこは何も教えてくれません。

例えば、広告でよく売れる商品Aがあったとします。数字の上では立派な売れ筋です。ところが、Aから入ったお客様は、なぜか二度と戻ってきません。一方で、ランキングでは地味な位置にいる商品B。これを最初に買った人は、その後も繰り返し買ってくれて、常連になっていきます。売上ランキングだけを見ていると、Aが主役でBは埋もれます。でも、お店の未来を作っているのは、本当はBのほうです。

「よく売れている商品」と「いいお客様を連れてくる商品」は、必ずしも一致しません。

商品には「役割」がある

そこで、見方を変えてみます。商品を、お客様の一連の買い物のなかで、どんな働きをしているかで見るのです。

どの商品も、お客様との付き合いのなかで、何かしらの役割を担っています。大きく分けると、3つです。

  • 入口商品:お客様がそのお店で最初に出会う商品

  • つながり商品:次の買い物を呼ぶ商品

  • 定番商品:繰り返し買われ、お店につなぎとめる商品

同じ商品が、いくつかの役割を兼ねることもあります。大事なのは、商品棚を「売上順」ではなく「役割」で並べ直してみることです。そうすると、これまで埋もれていた商品の働きが見えてきます。

入口の商品:最初の商品が、その後を決める

お客様が最初に買った商品は、その後の付き合い方をほとんど決めてしまいます。最初のひと品で、その人がお店とどう付き合っていくかが、だいたい決まってしまう、と言ってもいいくらいです。

見方はシンプルです。初回に買った商品ごとに顧客セグメントを分けて、その後のLTVやリピート率を並べます。すると、「どの商品から入った人が育っているか」が見えてきます。その後よく育つお客様を連れてくる商品と、一度きりで終わってしまう商品が、はっきり分かれます。さきほどのAとBのように、広告で売れる商品と、いいお客様を連れてくる商品が別物だったことが、ここで数字になって現れます。

入口が見えると、打ち手も変わります。いいお客様を連れてくる商品は、広告でもトップページでも、初回のおすすめでも、いちばん目立つ場所に置きます。逆に、入ってきた人が育たない商品は、広告から外したり、見せ方を見直したりします。新規のお客様が最初に出会うひと品を、意図して選べるようになります。

新商品も、同じ見方ができます。新しい商品を出したとき、つい「いくら売れたか」で評価しがちですが、本当に見たいのはその中身です。新しいお客様を連れてきたのか、それとも、いつものお客様が買い回っただけなのか。ここが分かると、新商品の評価がぐっと正確になります。

次につながる商品:次の購入を促進する

入口の次に見るのは、ある商品を買ったお客様が、その次に何を買うかです。

ここで見るのは、同時に買われたものではなく、時間を置いて次に来るものです。A商品を買った人が、その後30日、90日、180日の間に何を買っているか。これを集計すると、「Aの次はB」「Bの次はC」という、お客様の自然な流れが見えてきます。「次に何を勧めるか」を、これまで経験や勘で決めていたところを、実際の購買データで決められるようになります。二度目の購入でよく選ばれる商品が分かれば、初回のお客様へのフォローで何を勧めればいいかも、はっきりします。

この「次」には、2つの方向があります。ひとつは、同じカテゴリーのなかで、一段上の商品へ進んでいく流れです。お試しサイズから本商品へ、ベーシックから上位グレードへ。これがいわゆるアップセルにあたります。もうひとつは、別のカテゴリーの、補い合う商品へ広がっていく流れです。本体を買った人が付属品を買う、シャンプーを買った人がトリートメントを買う。こちらがクロスセルです。同じ次のひと品でも、上に伸びるのか、横に広がるのか。両方を見ておくと、勧める商品の選び方が変わります。

打ち手としては、フォローメールやLINEで勧める商品をこの流れに合わせて差し替えたり、商品ページの「よく一緒に買われている商品」を入れ替えたり、セットやギフトボックスの中身を組み直したりできます。

定番になる商品:繰り返し買われ、つなぎとめる

入口や次のつながりが「お客様が動く」話だとすれば、定番は「お客様がとどまる」話です。

見るのは、その商品を、同じ人が繰り返し買っているかどうかです。一人のお客様が何度も買っている商品はどれか。一人あたりの購入回数が多い商品はどれか。こうして見ると、お客様をお店につなぎとめている商品が浮かび上がってきます。

こうした商品を持っているお客様は、なかなか離れません。逆に、毎回ちがうものをばらばらに買っているお客様は、ふっといなくなりやすいものです。だからこそ、定番を持っているお客様と持っていないお客様で、リピート率や離れやすさを比べてみる価値があります。

ここで気をつけたいのは、入口で売れる商品と、定番になる商品は別物だということです。最初のひと品としてよく選ばれる商品が、そのまま何度も買われる商品になるとはかぎりません。両方を分けて見ておくと、「最初に出会ってもらう商品」と「そのあと定番になってもらう商品」を、それぞれ意図して育てられます。

定番には、買い直しの周期があります。だいたいこのくらいの間隔で次が来る、という波です。この波が分かれば、ちょうど切らしそうなタイミングで声をかけられます。定番になりそうな商品を、入ってきたばかりのお客様にうまく橋渡ししたり、定期便やサブスクに乗せたり、周期に合わせてフォローしたり。つなぎとめる商品をめぐる打ち手は、ここから広がります。

どの単位で見るか

ここまでは、一つひとつの商品を単位にした話でした。でも、この「役割で見る目」は、見る単位を変えても、そのまま使えます。

ひとつ大きくして、商品のタイプやカテゴリーでまとめて見ると、細かなばらつきが消えて、大きな傾向が見えてきます。たとえば、スキンケアから入った人と、メイクから入った人。どちらが育っているかを比べると、それはもう個別の商品の話ではなく、どの商品ラインを伸ばすかという、品揃えの方針の話になります。

このとき、まとめ方はカテゴリーだけにしばられません。色味、デザインの雰囲気、用途、価格帯、サイズ展開の多さ。お客様が「これにしよう」と思うときに効いていそうな特徴で、商品をまとめることもできます。すると、「明るい色から入った人は育ちやすい」「ギフト用途で入った人は定番になりにくい」といった、特徴ごとの傾向が見えてきます。どんな特徴を持つ商品が、どんなお客様に選ばれているのか。これが分かると、次の商品を企画するときの土台になります。

逆に、ひとつ細かくして、同じ商品のバリエーションで見ることもできます。同じ商品でも、どの色から入った人が育つのか、どのサイズが、どの味が育つのか。ここまで下りると、話は具体的な打ち手になります。主力にすべきバリエーションはどれか、押し出すべき味はどれか。

まとめて見れば方針の話になり、細かく見れば実行の話になります。同じ分析でも、見る単位しだいで、戦略にも打ち手にもなる。ここが、単位をずらして見ることの面白いところです。

共通する考え方

入口で見ても、つながりで見ても、定番で見ても、どの単位で見ても、測っているものさしは一つです。

「その商品を買った人が、その後どう育ったか」

売上額は、今この瞬間しか見ていません。それに対して、お客様の動きは、そのあとを見ています。同じ商品でも、このものさしで見直すと、順位が入れ替わります。売上ランキングでは下のほうにいた商品が、じつはいちばんいいお客様を連れてきていた、ということが起こります。

このものさしが入ると、社内での商品の話し方が変わっていきます。商品会議が、売上順ではなく役割順で語られるようになります。広告の評価が、その場のコストではなく、その後のLTVで語られるようになります。商品企画も、「売れる商品を作る」から「育てる商品を作る」へと、問いそのものが変わっていきます。

まとめ

商品分析は幅が広いように見えますが、軸は一つです。売上で見るのをやめて、顧客をどう動かすかで見る。ただそれだけです。

商品の役割は、入口・つながり・定番の3つ。見る単位は、ひとつの商品から、タイプやカテゴリーへ、あるいはバリエーションへと、自由に変えられます。そして、どこから見ても、ものさしは「その商品を買った人が、その後どう育ったか」の一つだけ。この見方をいちど身につけてしまえば、どんな商品にも、どんな品揃えにも、同じように当てられます。

まずは、自分のお店の売れ筋を一つ選んでみてください。そして、その商品から入ったお客様が、今どれくらい育っているかを見てみる。売上ランキングのいちばん上にある商品が、いちばんいいお客様を連れてくる入口とはかぎりません。そのことに気づくのが、最初の一歩になります。