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店舗×EC併用分析

店舗もECも使ってくれる顧客を増やす

店舗とECの売上を、別々に管理していないでしょうか。「店舗ごとにいくら、ECはいくら」と分けて見ているケースがよくあります。

ただ、顧客は店舗とECを行き来しながら買い物をしています。普段はECで買うけれど、たまに店舗で試着してから買う。逆に、店舗で気に入って、次からはECで買うようになる。そういう動きが日常的に起きています。

店舗とECには、それぞれの良さがあります。店舗は実物を見られて接客が受けられる、ECはいつでもどこでも買える。顧客にこの両方を行き来してもらえるようになると、関係はぐっと深くなります。

そのために必要なのが、店舗とECを別々に見るのをやめて、顧客起点で両方をまとめて見ることです。

3つのセグメントを作る

最初にやるのは、顧客を次の3つに分けることです。

  • 併用顧客:店舗でもECでも買ったことがある人
  • 店舗のみ顧客:店舗でしか買ったことがない人
  • ECのみ顧客:ECでしか買ったことがない人

顧客一人ひとりの購買履歴を、チャネルの軸で切り直すイメージです。

見るべき2つの指標

セグメントを作ったら、次の2つを見ます。

併用率

それぞれのセグメントに何人いるかを数えます。そのうえで、全体に対する併用顧客の割合(併用率)を出します。

併用率がどのくらいだと良いのか、という基準は実はあまり意味がありません。業種や価格帯、店舗網の規模で大きく変わるからです。大事なのは、「自社の今の数値はこれだ」と起点を決めて、そこから上げていく動きを作ることです。

セグメント別のLTV

3つのセグメントそれぞれのLTV(顧客生涯価値、ひとりの顧客が長期的にいくら使ってくれるか)を出して、並べます。

ほとんどの場合、併用顧客のLTVが他の2つを大きく引き離します。店舗のみ顧客やECのみ顧客と比べて、1.5倍、2倍といった差が出ることも珍しくありません。

併用顧客を増やすという動きは、新規獲得に頼らずにLTVを伸ばす一番効率的な手段になります。すでにブランドを知ってくれている顧客にもう一方のチャネルも使ってもらうほうが、ゼロから新規顧客を獲得するよりずっと近道だからです。

併用顧客を増やすための打ち手

現状が見えたら、次は施策です。やることはシンプルで、店舗のみ顧客にはECを、ECのみ顧客には店舗を体験してもらう仕掛けを作っていきます。

店舗のみ顧客 → EC誘導

店舗で買い物している顧客に、ECも使ってもらうための導線を作ります。

  • レジでのLINE登録・会員登録の声かけと、登録特典の設計
  • レシートやショッパーへのQRコード印字でEC会員登録に誘導
  • 同梱物・サンキューカードにEC限定特典コードを記載
  • 店頭で品切れだった商品を、その場でECから注文できる仕組み
  • 店舗スタッフが接客の最後に「次回はECでも」と一言添える運用
  • 購入履歴に基づくお手入れ商品・補充品のリマインド配信
  • 店舗で買った商品の関連商品を、後日ECからレコメンドするメール・LINE
  • ECの会員ランクやポイントが店舗購入と共通になっていることの周知
  • 店舗購入者限定のEC初回送料無料クーポン
  • 購入から2週間〜1か月後の使用感ヒアリングと、合わせ買い提案

ECのみ顧客 → 店舗誘導

ECで買っている顧客に、店舗にも来てもらう仕掛けを作ります。たとえば:

  • 店舗受取で送料無料(EC購入の受け取り場所として店舗を提示)
  • 配送完了後のフォローメールに、近隣店舗の案内を添える
  • 返品・交換時に「店舗でもお手続きいただけます」と案内する
  • 来店予約・スタイリング相談の案内
  • 店舗限定の商品・カラー・サイズの告知
  • EC会員向けの店舗利用クーポン(初回来店特典)
  • 購入商品のお手入れ・サイズ調整・修理を店舗で受け付ける動線
  • 店舗限定イベント、新作先行展示への招待
  • パーソナルカウンセリング・採寸・カラー診断などの体験予約
  • スタッフ指名予約で、安心して来られる仕組み

住所データを使ったセグメントの細分化

ECのみ顧客に対して店舗誘導をかけるとき、全員に同じ案内を送っても効率が悪いです。住所データを使って、「ECのみ顧客 × 大阪エリア」のように切ると、近くの店舗を具体的に提案できるようになります。

「ECのみ顧客 × 渋谷エリア」の顧客には渋谷店のイベント案内を、「ECのみ顧客 × 名古屋エリア」の顧客には名古屋店のスタイリング相談を、というふうに使い分けられます。

月次でのモニタリング

施策を打ち始めたら、効果が出ているかを月次で追っていきます。ここで見るのは次の3つです。

① 併用率(併用顧客の比率)

全体のうち、併用顧客が何%いるか。これは「いま、どれくらい併用化できているか」を表す、たまっている資産のような数字です。

② 併用化率(単独から併用に移った人の割合)

その月に、店舗のみ顧客やECのみ顧客が、新たに併用顧客に移った割合。これは「今月どれだけ動かせたか」という、月ごとの動きを見る数字です。

③ 単独顧客と併用顧客のLTV差、併用化前後のLTV変化

併用顧客のLTVが、単独顧客に比べてどれだけ高いか。また、ある顧客が併用化したあと、その人のLTVがどう変わったか。これは併用化が実際にどれだけの価値を生んでいるかを測る数字です。

なぜこの3つを分けるのか。「併用率は上がっているけど、本当に施策が効いているのか、それともたまたま新規に併用顧客が多かっただけなのか」といった切り分けができるようになるからです。1つの数字だけ見ていると、効果と要因がごちゃまぜになってしまいます。

経営軸への組み込み

この分析は、現場の数字遊びで終わらせず、経営の意思決定の中に組み込むことが大事です。具体的には次のような形です。

  • 経営会議の定例ボードに併用率を載せる
  • 月次目標を設定する(例:併用率を半年でX%からY%に)
  • 「今月の併用化人数」を全社で意識できる状態を作る

売上目標と並んで併用率が話題に上がるようになると、現場の打ち手も自然と変わっていきます。「今月の売上をどう積むか」だけでなく、「今月、何人を併用顧客に動かせるか」が、日々の判断軸に入ってきます。

まとめ

店舗とECを別々に管理するのをやめて、顧客起点で見直すのが店舗×EC併用分析です。

まずは併用・店舗のみ・ECのみの3つのセグメントを作り、顧客数とLTVで現状を把握する。次に、店舗のみ顧客にはEC誘導、ECのみ顧客には店舗誘導の施策を打つ。住所データを組み合わせれば、よりピンポイントな提案ができます。そして、併用率・併用化率・LTV差の3つを月次で追いかけていく。最後に、これらを経営会議の議題にのせて、全社の意思決定に組み込みます。

併用顧客は、自社の顧客の中でもいちばんLTVが高い層です。その層をどう増やすか。これが、店舗とECの両方を持っているブランドにとっての、これからの大きなテーマになります。

まずは、自社のいまの併用率を出してみるところから始めてみてください。