🚀

顧客ランク分析

ロイヤリティランク制度、ちゃんと活用できているでしょうか。

ロイヤリティアプリを入れて、ブロンズ・シルバー・ゴールド・プラチナのランクを作ったけれど、運用が止まってしまっているストアは、かなり多いです。

この記事で紹介するのは、3つのステップに絞ったランク分析の進め方です。これを実行するだけで、ランク制度の効果は何倍にも変わります。

順に説明していきます。

ランク制度は何のためにあるか

ロイヤリティランク制度は、顧客に「もっと購入する理由」を与えるための仕組みです。

ゴールドになると送料無料、プラチナになると先行販売、といった特典の階段がある。顧客はその階段を意識しながら買い物をするなどという形で設計されているはずです。

ということは、分析でやるべきことも3つに絞れます。

  1. いま顧客はどのランクに何人いるのか(分布を知る)
  2. 上のランクに上がれている人はいるのか(動きを知る)
  3. あと少しで上がれそうな人を、後押しできるか(介入する)

ランクごとのLTVをただ並べても、この3つはどれも分かりません。「プラチナ顧客はLTVが高い」というのは、定義からしてほぼ当たり前の話です。たくさん買ったからプラチナなのであって、それを見て「プラチナを増やそう」と思っても、肝心の増やし方は分からないままです。

知りたいのは「プラチナの人は優秀」ということではなく、「どうすればプラチナになる人を増やせるか」のはず。今回の3ステップは、その問いに答えるための順番になっています。

ステップ1:ランクごとの顧客の分布を知る

最初にやる事は、ランクごとの人数を知ることです。

LTVも金額も、いったん要りません。人数だけです。

なぜ人数だけでいいのか。ピラミッドの「形」を見るだけで、制度が機能しているかどうかは、ある程度判定できるからです。

上が極端に薄い、たとえばプラチナが全体の0.5%未満しかないようなときは、閾値が高すぎて誰も到達できていない可能性があります。

中位のシルバーからゴールドあたりに人が滞留している場合は、次の閾値が遠すぎて、駆け上がる動機が消えてしまっています。中位の特典と上位の特典の差が見合っていないことが多いです。

下位のブロンズに顧客が固まっていてほとんど動かない場合は、入口は機能していても、昇格の仕組みがほぼ働いていないということになります。

健全なピラミッドに絶対的な正解はありませんが、ひとつの目安としては「上にいくほど人数は減るけれど、減り方が緩やかで連続的」であること。極端な段差や、特定の階に人が貼り付いている形は、設計のどこかにひずみがあることが多いです。

月次で記録する

ピラミッドは一度描いて終わりではなく、月次でスナップショットを残すことに意味があります。

3か月、6か月と並べていくと、いろいろなことが見えてきます。形が安定していれば制度が均衡している。中位が膨らみ続けていれば、昇格しやすいわりにその上に登れていない、つまりしきい値の見直しサインです。上位が痩せ続けていれば、既存上位顧客が降格・離脱している、特典の陳腐化サインです。

ステップ1は、制度の健康診断です。異常値が出たときに、ステップ2や3で具体的な打ち手につなげるための土台になります。

ステップ2:「あと少しで昇格」層にナッジを送る

ここがこの記事の本丸で、ランク分析でいちばん売上に直結するのはこれです。

行動経済学に「ゴール勾配効果」という現象があります。人は、ゴールに近づくほど、それを達成しようとする努力を強める、というものです。

スタンプカードがあと1個で埋まるときに、わざわざ立ち寄ってお店に行く。マラソンのラストスパート。プログレスバーが90%まで来たアプリは閉じにくい。いずれも、同じ心理の現れです。

ロイヤリティランクも、これとまったく同じ構造をしています。「あと5,000円でゴールド」という情報を持っている顧客は、持っていない顧客よりも明らかに買いやすい。しかも顧客側も、漠然と「いつかゴールドになりたい」「プラチナの先行販売を受けたい」と思っています。後押しが歓迎される、数少ない販促タイミングです。

ステップ2は、この心理メカニズムを、セグメントとメッセージで仕組み化する作業になります。

セグメントの作り方

「あと一歩」をどう定義するかが鍵です。広すぎるとメッセージが弱まりますし、狭すぎると母数が取れません。

うまくいきやすいのは、AOV(平均購入単価)の1〜2回分の幅で切る方法です。たとえばAOVが5,000円のストアで、ゴールドの閾値が累計5万円だとします。このとき、「累計購入額が45,000円〜50,000円の顧客」を「ゴールド昇格目前」セグメントにすると、「あと1回、いつもくらいの買い物をすればゴールド」というメッセージが成立します。

つくるセグメントは「シルバー昇格目前」「ゴールド昇格目前」「プラチナ昇格目前」などです。

さらに条件として「直近購入が90日以内」を加えます。長期休眠者を入れてしまうと、メッセージが届かない、あるいは届いても響かない層が混じってしまい、効果検証がぼやけるからです。「アクティブで、あと一歩」の人だけに絞る、というのがポイントです。

ナッジに入れる3つの要素

メッセージに必ず入れる要素は3つあります。

1つ目は、個別化された根拠です。「あと4,200円でゴールド到達」という、その人専用の数字。「もうすぐゴールドです」だけでは響きません。具体的な金額があることで、ゴールがぐっと近くに感じられます。

2つ目は、昇格後の特典をもう一度見せること。「ゴールド到達で、送料無料・ポイント2倍・先行販売の招待」など、登った先の景色を一緒に示します。顧客は意外と特典の内容を覚えていないものです。

3つ目は、閾値を超える価格帯の商品提案です。あと4,200円必要なら、5,000円前後の商品を3つほど提案する。「探す手間」を消すと、行動への摩擦が一段下がります。

この3つが揃って、はじめてナッジとして機能します。どれが欠けても効果は落ちます。

送信のタイミング

送信するタイミングは2回。期間始めの「今期間、あと◯円で(ランク名)です」と、期間が終わる1週間前の「期間終了まで、あと◯円」。特に効くのは後者のほうです。

なぜ期間の終わりを区切りにするかというと、期限がないゴールはゴールとして機能しないからです。「いつでもいい」と言われたら人は動きません。たとえそれがお店の都合でつくった締切でも、期限があるだけで行動率は上がります。

「今の期間のうちにゴールド到達した方には、次の期間に◯◯のボーナス」といった小さな上乗せを組み合わせると、さらに効きやすくなります。

ステップ3:昇格・降格の人数を見る

ここからは応用編です。ステップ1とステップ2だけで、ランク分析の9割の価値は取れる、と最初に書きました。ステップ3に進むのは、もう一段制度を磨き込みたくなったタイミングでいいと思います。

なにを見るか

「前回のランク × 今回のランク」のクロス集計で、昇格と降格の人数を見ます。

対角線上が「ランク維持」、対角線より右上が「昇格」、左下が「降格」です。注目するのは隣り合うランクの間の動きで、ブロンズとシルバーの間、シルバーとゴールドの間、ゴールドとプラチナの間で、昇格と降格の人数がそれぞれどうなっているかを見ます。

なにが見えるか

昇格が降格を上回るペアが多ければ、制度全体が拡大基調にあり、機能しているということです。

昇格も降格も少なくて全体に動きが鈍いときは、顧客がランクを意識しなくなっています。

上位のゴールド・プラチナからの降格が増えているときは、最優先で見直すべきサインです。上位特典が陳腐化して、上にいるメリットが薄れている可能性があります。

特に最後の「上位からの降格」は要注意で、放置するとピラミッドの上から崩れていきます。上位顧客は新規獲得の何倍ものコストをかけて育てた層なので、ここの離脱は損失が大きいです。

まとめ

ロイヤリティランク分析は、3つのステップに絞れば十分です。

  1. まずはランクピラミッドを定期的に描いて、制度の健康診断をする。
  2. 次に「あと◯円で昇格」層にナッジを送って、売上をつくる。
  3. さらに踏み込むなら、昇格と降格の人数を見て、制度全体を見直す。

ロイヤリティランク制度は、放っておいて自然に効くものではありません。集計期間ごとに1回、能動的に「登る直前の人」を後押しすることで、はじめて制度が動き始めます。

まずやることは、ステップ2の「あと◯円」セグメントを今の期間でつくって、期間が終わる1週間前に1通送ること。AOVの1〜2回分の幅でセグメントを定義し、直近購入90日以内に絞って、「あと◯円」「昇格特典」「対象商品」の3点をメッセージに入れる。これだけです。

ピラミッドを眺めて終わるのではなく、自分の手で顧客を引き上げにいく。まずはその1通から始めてみてください。