ECPower

「勘ベース」から「根拠ベース」の提案へ。IKKANがECPowerで実践する、顧客データを起点にしたマーケティング支援

マーケティング支援企業の株式会社IKKANは、ECPowerで初回購入商品別のLTVやシリーズ商品の継続購入率を分析し、メール・LINEの配信対象の抽出、商品構成の提案、次回発売時の販売予測につなげています。顧客データを根拠にした提案で、クライアントの意思決定がどう変わったのかを伺いました。

増田 大夢
・ 読了 約16分

「どの商品を、誰に、どう売るか」。ECの売上を伸ばすうえで欠かせないこの判断を、顧客データから考えるマーケティングエージェンシーがIKKANです。

アパレルをはじめとするECブランドを中心に、ECサイトの構築から運用、マーケティングまでを支援する同社。クライアントへの提案で大切にしているのは、商品の売上だけでなく、その商品を購入したお客様が、その後どのようにブランドと関わっているかを捉えることです。

IKKANではECPowerを活用し、初回購入商品ごとのLTVの比較や、シリーズ商品の継続購入、流入経路別の購買行動を分析。得られた発見を、メール・LINEの配信施策や商品構成の提案、次回発売時の販売予測につなげています。

顧客データを活用することで、提案の内容やクライアントの意思決定はどう変わったのか。そして、データによる効率化は、ブランドらしい挑戦にどうつながるのか。IKKANの小林さんに伺いました。

IKKANについて

株式会社IKKANは、ECサイトの構築・運用からマーケティングまでを支援するエージェンシーです。アパレルをはじめとするECブランドを中心に、年商1億〜10億円規模の企業を支援。サイト構築後の運用や販促にも関わり、「売上をどう伸ばすか」という視点でクライアントの事業に伴走しています。

お話を伺った方:IKKAN 小林 諒佑さん

項目 内容
導入前の課題 データの抽出・集計・突き合わせに手間がかかり、商品や流入経路と、その後の顧客行動との関係を確認しづらかった
ECPowerの活用方法 初回購入商品別のLTV比較、配信対象となる顧客の抽出、シリーズ商品の継続購入分析、流入経路別の顧客分析
導入後の変化 顧客データを根拠に、配信施策や商品構成、販売計画を提案。分析の負担が減り、クライアントとの意思決定も進めやすくなった

売上を伸ばす提案に必要だった、顧客と商品の「関係性」

― まず、IKKANの事業と、小林さんが担当されている支援について教えてください。

小林さん: アパレルを中心に、さまざまなクライアントを支援していて、そのうち10社ほどでECPowerを活用しています。規模としては、年商1億〜10億円くらいの企業が多いですね。

ECサイトの構築から運用まで担当する場合もあれば、マーケティングだけをご一緒する場合もあります。関わり方はそれぞれですが、私たちの役割は「売上をどう上げるか」を考えることです。

ただ、クライアントのブランドでは、商品そのものを私たちが自由に変えられるわけではありません。ブランドとしての商品づくりがあるなかで、今ある商品を誰に、どう売っていくかを考える場面が多いんです。

そこで大切になるのが、お客様を理解することです。何が売れているかに加えて、どういうお客様が買っているのか。その後も購入してくださっているのか。そこまで見えると、提案できることが変わってきます。

― 他のEC制作会社やエージェンシーと比べて、IKKANの違いは何ですか。

小林さん: 自社でもブランドを運営していることです。広告運用やCRM、在庫の判断、売上の責任まで自分ごととして経験しているので、提案が机上の空論にならないと考えています。

― ECPowerを使う前は、顧客の分析にどのような難しさがありましたか。

小林さん: Shopifyの標準レポートでも、商品ごとの販売数や売上は確認できます。ただ、その先を見ようとすると、データを出して、Excelで集計して、ほかのデータと突き合わせる作業に手間がかかっていました。

ある商品が何個売れたか、どれくらいの売上になったかは確認できます。でも、その商品を買ったお客様が、その後も買っているのかを知ろうとすると、さらにデータを加工しなければいけません。

流入経路も同じです。そこから何件購入されたかだけでなく、その経路で来たお客様が、その後どのくらい購入してくださっているかを見たい。そうすると、また別の集計が必要になります。

数字はあっても、施策を考えるために必要な形にするまでに作業がかかるんです。分析したいことが増えるほど、その負担も大きくなっていました。

― ECPowerによって、何が見やすくなったのでしょうか。

小林さん: 一番は「関係性」ですね。

商品と顧客の関係、流入経路とその後の購買の関係。単独の数字だけでは分からない、つながりを確認しやすくなりました。

例えば、よく売れている商品と、長く購入してくださるお客様の入り口になっている商品が、必ずしも同じとは限りません。販売数だけを見ていると分からなかったことが、顧客の切り口を加えることで見えてきます。

「この商品が売れています」で終わらず、「この商品を最初に買った方は、その後こういう買い方をしています」と考えられる。その違いは、提案をつくるうえで大きいです。

― ECPowerを複数のクライアントで使うことにした決め手は何ですか。

小林さん: ECPowerで見ている軸が、業種を問わず使える「型」になると分かったことです。1社で効果があった分析を、別のクライアントに当てはめても、同じように使えました。

たとえば、F2転換率の推移の見方や、休眠していたお客様がどれだけ戻ってきたかの見方は、ブランドが違っても同じ手順で使えます。

― 実際には、どのような順番で分析を進めていますか。

小林さん: まずストア全体を見て、基準を把握します。全体のLTVやリピート率がどのくらいなのかを確認したうえで、商品やカテゴリーごとの特徴を見ていきます。

その後に、チャネルごとの違いを見ます。どこから来たお客様なのか、どういう広告をきっかけに購入したのか。そのお客様が、その後どうなっているのかを確認します。

いきなり細かく分けるというより、全体と比較して、どこに特徴があるかを見つけていく形です。

そこから、伸ばせそうな商品や、もっと提案できそうなお客様を考えます。分析の数字を眺めるだけでなく、誰に何をするかまでつなげることを意識しています。

顧客分析を、配信施策と販売計画につなげる

― アパレルブランドでは、どのような分析を行ったのでしょうか。

小林さん: あるブランドでは、Tシャツが販売の中心になっていました。まずはストア全体の数字を確認してから、Tシャツやパンツなど、カテゴリーごとに顧客の特徴を見ていきました。

そこで分かったのが、パンツを購入しているお客様のLTVが高いということです。

ただ、「パンツを買ったことがある方」でまとめると、何度も購入しているうちにパンツを買った方も含まれます。もともと購入回数が多いお客様だから、LTVが高いという可能性もありますよね。

そこで、購入経験の有無だけでなく、「最初に何を買ったか」という切り口でも比較しました。

― 初回購入商品で比較すると、どのような違いが見えましたか。

小林さん: 分析時点で、初回にパンツを購入したお客様の平均累計購入額は約5.5万円、初回にTシャツを購入したお客様は約2.8万円でした。

小林さん: この比較だけで、パンツを買えばLTVが上がるとまでは言えません。ただ、販売数だけを見ていたときとは、商品の見え方が変わりました。

Tシャツはブランドにとって重要な商品です。ただ、グラフを見ると、初回にTシャツを買ったお客様の平均は、ストア全体の平均を下回っています。ブランドを知ってもらう入口としての役割は大きい一方で、その後の関係を深めるという点では、パンツにも注目する理由があると分かったんです。

そうすると、「Tシャツをもっと売るにはどうするか」に加えて、「パンツにも興味を持っていただくにはどうするか」という視点が生まれます。購入の早い段階で、パンツを提案する機会をつくれないかと考えるようになりました。

― その発見を、どのような施策につなげましたか。

小林さん: ECPowerで、パンツをまだ購入していないお客様を抽出しました。その顧客をShopifyのタグで管理して、メールやLINEの配信対象につなげています。

配信では、パンツを取り入れたコーディネートを紹介したり、パンツの購入に使えるクーポンを届けたりしています。

すでにブランドの商品を買ってくださっている方でも、パンツの魅力や、自分がどう着るかをイメージできていないかもしれません。そこで、コーディネートを通じて関心を持っていただき、購入のきっかけをつくるという考え方です。

「パンツを売りたい」という商品側の話から、「まだパンツを購入していないお客様に、何を伝えるか」という具体的な施策に落とし込めました。

― Shopifyの構築の段階から、意識していることはありますか。

小林さん: 顧客タグ・商品タグ・注文タグの付け方を、構築の段階で設計しておきます。運用が始まってから後付けすると過去データが揃わず、分析の精度が落ちるためです。

どんな分析ができるかを普段から見ているので、そこから逆算してサイトを作れるところが、私たちらしさだと思います。

― 配信以外の提案にも、分析結果を活かしているのでしょうか。

小林さん: パンツの在庫を増やす提案にもつなげています。

販売の中心になっている商品だけを見ると、どうしてもその商品に寄せた判断になりやすいと思います。でも、顧客データを見て、別のカテゴリーにも可能性があると分かれば、商品構成についても話ができます。

広告やメールの改善だけでなく、何を用意して、何をお客様に提案していくか。その相談に、顧客分析の結果を使えるようになりました。

支援する立場としても、こうした根拠があると提案しやすいですし、クライアントにも検討していただきやすくなります。

― アパレル以外では、どのように顧客データを活用されていますか。

小林さん: あるクライアントでは、シリーズで展開している商品の継続購入を分析しています。こうした商品では、前の弾を買ったお客様が、次の弾も買ってくださるかが、販売計画を考えるうえで重要になります。

そこで、各弾の購入者が、次の発売時にどのくらい戻ってきているかを確認しました。

売上や購入者数の合計だけでは、誰が購入しているかまでは分かりません。継続して購入してくださっている方と、前の弾の対象期間には購入していなかった方を分けて見ることで、次の販売を考える材料にしています。

― 継続購入の状況は、どのように確認したのでしょうか。

小林さん: 前の弾の購入者を起点に、その方たちが次の弾の発売後1週間にも購入したかを見ています。

第1弾は発売から第2弾発売前までの購入者、第2弾以降は発売後1週間の購入者を対象にしました。そのうえで、次の弾の発売後1週間の購入状況を確認しています。

購入のつながり 対象となる前の弾の購入者数 次の弾の発売後1週間にも購入した人数 継続購入率
第1弾 → 第2弾 564人 227人 40.2%
第2弾 → 第3弾 390人 233人 59.7%
第3弾 → 第4弾 380人 283人 74.5%

小林さん: それぞれ対象となるお客様や購入期間が違うので、同じお客様の継続率がそのまま上がっていったという意味ではありません。各回で、前の購入者がどのくらい次の発売時にも購入しているかを見ています。

このように分けると、購入者数の合計だけでは見えないことが分かります。

例えば、第2弾から第4弾の発売後1週間の購入者数は、いずれも380〜390人ほどでした。でも、そのなかで前の弾から継続している方の人数は異なります。

同じくらいの人数が購入していても、誰が購入しているかまで見ると、次の販売を考える材料が増えるんです。

― その分析は、次回の販売計画にどうつながっていますか。

小林さん: 次の弾を出すときに、過去の購入者のうち、何人くらいが戻ってきそうかを考える材料になります。

そこに、前回の対象期間には購入していなかった方からの購入をどれくらい見込むかを加えて、購入者数や売上の予測をつくっています。

ここでいう新たな購入者は、ストアで初めて買う方だけではありません。以前に別の商品を買っていたり、今回の分析対象期間より前に購入していたりする方も含まれます。あくまで、前の弾の対象となる購入者と、それ以外の方を分けて考えています。

また、継続購入率を一つに決めて予測するのではなく、条件を変えて複数のシナリオを用意しています。どれくらいの継続購入を見込むかによって、必要な在庫や売上の見通しが変わるからです。

― ECPowerのデータをもとに、IKKANで予測を組み立てているのですね。

小林さん: そうです。ECPowerで顧客の動きを確認し、その数字をもとに、私たちが次の発売の予測を組み立てています。

あるシリーズの分析で得た情報を、別のシリーズの販売計画を考える際にも参考にしています。

もちろん、シリーズや商品が変われば、お客様の動きも同じとは限りません。だからこそ、いくつかの条件を置いて見通しをつくり、在庫や広告について相談する材料にしています。

以前の販売実績を参考にする場合でも、「前回これくらい売れた」という合計だけでなく、その売上をつくったお客様が次も買ってくださりそうかまで考えられるようになりました。

― 広告の評価にも、顧客データを活用していますか。

小林さん: はい。広告から最初の購入につながったかだけでなく、そのお客様が、その後どれくらい購入してくださっているかも見ています。

UTMを使って、流入経路やクリエイティブごとの顧客を確認します。そのうえで、LTVや粗利を踏まえて、獲得にどこまでコストをかけられるかを考えます。

初回購入の数字だけで見ると、評価しづらい施策もあります。その後の購入まで含めることで、獲得したお客様との関係を、もう少し長い目で判断できます。

リピートしているお客様の分析というと、既存のお客様への施策に使うイメージが強いかもしれません。でも、長く購入してくださる方が、何をきっかけに来ているかが分かれば、新しいお客様をどう獲得するかにもつながります。

顧客の嗜好が多様化して、新規獲得は年々難しくなっています。それでも新規のお客様が増えることは、結果的にブランド全体のロイヤリティやリピート率の底上げにもつながると考えているので、新規獲得にこそデータを使いたいと思っています。

「勘ベース」から「根拠ベース」へ。提案が変わると、意思決定も変わる

― ECPowerを使うことで、クライアントへの提案はどう変わりましたか。

小林さん: 「勘ベース」から「根拠ベース」の提案になったと思います。

これまでの経験から、こうしたほうがよさそうだと感じることはあります。でも、その感覚だけを伝えても、クライアントは判断しづらいですよね。

例えば、パンツをもっと提案したいと考えたときに、「パンツに力を入れましょう」と言うだけでなく、初回購入商品ごとのLTVを見せながら、取り組みたい理由を説明できます。

シリーズ商品であれば、過去の購入者が次の発売時にどれくらい戻ってきているかを示したうえで、次の販売計画を相談できます。

提案そのものに加えて、「なぜ、その提案なのか」を共有しやすくなりました。

― 提案を受けるクライアント側にも変化はありましたか。

小林さん: 担当者の方が、上長や社長に説明しやすくなるという変化があります。

私たちと担当者の方が話して、よさそうですねとなっても、それだけで施策が動くとは限りません。社内で確認したり、予算や在庫について判断してもらったりする必要があります。

そのときに、根拠となるデータがあれば、担当者の方も説明しやすくなります。何を見て、なぜこの施策を提案しているのかを、その先の方にも伝えられるからです。

結果として、意思決定が早くなり、施策を実行する機会も増やしやすくなります。支援する側としては、良い提案を考えるだけでなく、実際に動かせるところまで持っていくことが大事なので、そこに役立っています。

― 分析にかかる作業の面では、どのような変化がありましたか。

小林さん: データを出して加工する作業の負担が減ったことは大きいですね。

知りたいことがあったときに、そのたびに集計から始める必要があると、確認するまでに時間がかかります。ECPowerで関係性を確認しやすくなったことで、分析結果を見て、次に何をするかを考えやすくなりました。

私たちの仕事は、データを集計して渡すことではなく、それを売上につながる提案にすることです。

誰に何を提案するのか。どの商品を伸ばしていくのか。次の発売に向けて、どのくらい準備するのか。そうした話に時間を使えることに価値を感じています。

― 顧客データは、今後どのような支援に活かしていきたいですか。

小林さん: リピートしてくださるお客様を知ることは、次の商品や、新しいお客様との接点を考えることにもつながると思っています。

どんな商品から入った方が長く付き合ってくださっているのか。どういう商品を購入しているのか。そうしたことが分かると、既存のお客様への配信だけでなく、新規獲得や商品企画の話にも広げられます。

支援する立場として、顧客の動きをもとにブランドと話すことは重要です。販売する側の考えと、実際のお客様の行動を照らし合わせながら、次に何をするかを考えていきたいですね。

― 最後に、データを活用することと、ブランドらしい挑戦との関係について教えてください。

小林さん: 効率のよい施策を続けることは大切ですが、それだけでブランドが育つとは思っていません。

面白いことに取り組むことで、そのブランドの輪郭ができていくと思っています。数字の効率だけでは判断しきれないことにも、取り組む必要があるんです。

一方で、そうした挑戦を続けるためには、日々の事業を支える部分をきちんと考えておかなければいけません。どんなお客様が買ってくださっているのか、どこに投資するのかを把握して、精度を上げていくことが必要です。

「効率から脱却するためには、効率をやる必要がある」という感覚ですね。

顧客を理解して、根拠を持って施策を進める。その積み重ねがあるからこそ、ブランドらしい面白いことにも挑戦できる。ブランドをどう体感してもらうか、買い物をどう楽しんでもらうか。その問いに挑戦し続けるために、データを使いたいと思っています。

ECPowerは、その土台をつくるために活用しているツールだと思います。

この事例が参考になる方

  • 商品の販売実績に加えて、購入後の顧客行動も踏まえた提案をしたいEC支援会社・マーケティングエージェンシー
  • 初回購入商品やカテゴリーごとの違いを把握し、次に購入してもらう商品を考えたいEC事業者
  • 顧客分析からメール・LINEの配信対象を抽出し、具体的な施策につなげたい担当者
  • シリーズ商品や定期的な新商品発売に向けて、継続購入の状況を販売計画に活かしたい担当者

ECPowerについて

ECPowerは、Shopifyの購買データをもとに、顧客の特徴や購買行動を分析できるツールです。

初回購入商品や流入経路などの切り口で顧客を捉え、セグメントごとのLTVやリピート状況を確認。分析から見えてきた顧客の特徴を、配信対象の抽出やマーケティング施策の検討に活かせます。

IKKANでは、こうした顧客理解を、商品の提案、配信施策、販売予測へとつなげています。顧客データを共通の根拠として、支援会社とクライアントが次のアクションを考え、実行するためにECPowerを活用しています。

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AUTHOR
増田 大夢
株式会社ECPower 代表取締役CEO

東京大学工学部卒業後、株式会社サイバーエージェントに入社。ABEMAのエンジニア・データサイエンティストとして、CM配信サーバーの開発に従事。2020年に株式会社ECPowerを創業し、Shopifyを活用したEC事業者向けの支援サービスを展開。2026年、同社をフィードフォースグループに売却し、グループに参画。

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